| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第67回全国大会 (2020年3月、名古屋) 講演要旨
ESJ67 Abstract


一般講演(ポスター発表) P1-PA-082  (Poster presentation)

北海道に生息するトガリネズミ属4種の3次元空間利用の種間差
Interspecific variations in the use of three-dimensional space among four shrew species in  Hokkaido, Japan

*谷島桜(日大・生物資源), 大舘智志(北大・低温研), 河原淳(環境省), 中島啓裕(日大・生物資源)
*Sakura YAJIMA(Nihon  University), Satoshi OHDACHI(Hokkaido  University), Atsushi KAWAHARA(Ministry of the Environment), Yoshihiro NAKASHIMA(Nihon  University)

 北海道の一部地域には,トガリネズミ属4種(チビトガリネズミ,ヒメトガリネズミ, エゾトガリネズミ, オオアシトガリネズミ)が同所的に生息している.これらのうちチビトガリネズミは,頻繁に草本に登攀することが観察されている.本種は世界最小の哺乳類の一つであり,体重の軽さが,生息環境の3次元的利用を可能にし,結果として他種との競争を緩和している可能性がある.しかし,チビトガリネズミ以外の3種が,どの程度の頻度で草本上を利用するのかについては,これまで観察報告がない.そこで本研究では,これらの4種のトガリネズミを対象として飼育実験下で観察を行い,草本もしくは小枝に登攀する頻度および利用時間を調べた.チビトガリネズミは嶮暮帰島において,それ以外の3種は北海道厚岸郡浜中町と札幌市定山渓において捕獲した.観察は,北海道大学の飼育施設において行った.この結果,4種とも頻繁に草本もしくは小枝上に登攀することが分かった.もっとも大型のオオアシトガリネズミのみ地表行動や穴掘りなどの行動が多く,登攀頻度・滞在時間とも他の種に比べて有意に低かった.そのほかの種に関しては,チビトガリネズミと有意な違いは見られなかった.今回実験に利用した草本が比較的しっかりとした登攀しやすいものであったことが,種間差をなくした可能性があり,3次元空間利用の種間差を定量的に評価するためには,今後さらなる観察が必要であると考えられた.


日本生態学会