| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第67回全国大会 (2020年3月、名古屋) 講演要旨
ESJ67 Abstract


一般講演(ポスター発表) P1-PA-086  (Poster presentation)

ニホンヤモリは人工灯周辺への集合の際に光刺激を用いているか
Does Japanese gecko (Gekko japonicus) utilize a light stimulus when it comes to light areas?

*小林滉平(京都大学・理), 森哲(京都大学・理), 堀田崇(京都大学・文), 酒井理(京都大学・理)
*Kohei KOBAYASHI(Kyoto Univ. Science), Akira MORI(Kyoto Univ. Science), Takashi HOTTA(Kyoto Univ. Letters), Osamu SAKAI(Kyoto Univ. Science)

夜間の人工的な光には多くの生物が集まる。そのため、光に集まる生物を餌とする捕食者は、光環境の利用によって採餌効率を高めることができる。しかし、これらの捕食者が光に集まる行動のメカニズムや、その際に用いる手掛かりなどを調べた研究は限られている。本研究では、街中に生息し夜間に人工灯周辺に現れる昆虫食のニホンヤモリを対象に、光刺激への先天的な選好性の存在および学習による反応性の獲得を検証した。さらに、野外における光環境の利用頻度を調べるために、同一個体の特定の人工灯周辺への出現を短期的・長期的に観察した。光への選好性を調べた実験では、内部に照度勾配のある装置を用い、明所・暗所への選好性を滞在時間で評価した。その結果、全ての個体が明所への選好性を示すわけではなく個体差が見られた。学習の成立を調べた実験では、照度勾配のある装置で明所と餌との関連づけを試みた。その結果、5日間の訓練期間の前後で明所に近づくまでの時間は多くの個体において早まらず、光と餌刺激の関連学習は起こらなかった。野外調査では、最長で連続9日間の短期的な観察と月3回の調査を8カ月間行った長期的な観察の両方において、同一個体が特定の光環境に複数回現れた。実験では、選好した明るさと捕獲時の微環境照度が一致しない個体も複数存在したことから、光に集まる至近要因は先天的な光への選好性ではない可能性が考えられる。また、実験から後天的な光への反応も示唆されなかった。一方、野外調査からは一つの光環境を繰り返し利用することが示唆された。したがって、光刺激以外の人工灯周辺の他の環境要因がニホンヤモリを引きつけ、光環境に定着させている可能性が考えられる。


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