| 要旨トップ | 目次 | | 日本生態学会第67回全国大会 (2020年3月、名古屋) 講演要旨 ESJ67 Abstract |
一般講演(ポスター発表) P1-PA-087 (Poster presentation)
多くの動物は、生存や繁殖に様々な利点があることから集団を形成して生活する。集団の中で単なる性的活動以上の協調的な相互コミュニケーションがあれば、そこには社会があると定義される。これまで霊長類をはじめ多くの動物において社会行動に関する膨大な研究が行われてきた。一方で、3500種以上いるヘビ類は一般に単独性で、集団を形成することは非常に稀であり、個体間相互作用は繁殖に関するもの以外ではほとんど確認されてこなかった。したがって、爬虫類の中でもヘビは最も社会性が低いとされている。我々は、沖縄島に生息するアカマタにおいて社会行動を思わせる個体間相互作用を観察した。ヘビの餌としては珍しいウミガメの孵化幼体および卵を採餌する個体群が存在する沖縄島北部の砂浜において、2014年から2018年のウミガメ産卵シーズンにルートセンサスおよび定点ビデオカメラ撮影を実施し、砂浜におけるアカマタの探索・採餌行動を計606回、個体間相互作用を52例観察した。これらの個体間相互作用は、その行動的な特徴から主に2つに区分された。儀式化された闘争であるコンバットダンスを用いてウミガメの産卵巣から他個体を排除して餌資源を防衛する行動(なわばり行動)。占有個体に対して攻撃を仕掛ける時と逃げる時では相手のにおいの嗅ぎ方が変わり、闘争を仕掛けるかどうかは相手によって変化する行動。そして、闘争を仕掛けない場合、占有個体が食べ終えて産卵巣から去るまで付近で数時間待機する行動(順位制)。さらに、孵化幼体を捕獲した際、その場で呑み込むことなく植生帯内に持ち去るという、他個体との過度な接触を避けるような行動も示した。これらの行動は、これまで考えられていた以上に高い社会性がヘビに存在することを示唆するものである。そして、本個体群おける社会行動の発現には、ヘビでは特殊な餌資源であるウミガメの利用が強く関係していると考えられた。