| 要旨トップ | 目次 | | 日本生態学会第67回全国大会 (2020年3月、名古屋) 講演要旨 ESJ67 Abstract |
一般講演(ポスター発表) P1-PA-090 (Poster presentation)
一般的に、訪花昆虫の採餌行動は送粉と密接に関連していることが知られており、多くの研究が行われてきた。既往研究のほとんどは分類群や雌雄間での採餌行動の比較であるが、同種の同性内においても個体ごとに採餌行動が変化する可能性がある。単独性ハナバチは生涯を通して単独生活をしており、メスは営巣から産卵までを単独で行なう。そのため、単独性ハナバチのメスは、エイジや卵巣の状態(産卵の可否)などによって採餌目的や採餌行動を変化させている可能性がある。本研究では、近縁2種の単独性ハナバチを用いて同性内における採餌行動の変化を明らかにすることを目的とし、エイジおよび卵巣状態が採餌行動に与える影響を検討した。
ニッポンヒゲナガハナバチおよびシロスジヒゲナガハナバチのメスを対象に、2016年と2018年の3月から5月にかけて筑波大学構内のムラサキツメクサ群生地において調査を行なった。ムラサキツメクサに飛来してから立ち去るまでの花序滞在時間を計測し、その後採集した。採集個体は、花粉籠内の花粉の有無および体表付着花粉数を記録したのちに解剖を行なった。解剖では花蜜および花粉摂食の有無、保有成熟卵数を記録した。エイジの指標として、翅の汚損度を6段階に分けて評価した。採餌行動の一連の変化は構造方程式モデル(piecewise SEM)を用いて解析した。
その結果、エイジに伴って保有成熟卵数と花序滞在時間が増加していた。また、保有成熟卵数と花粉摂食の間には負の相関関係があった。加えて、保有成熟卵数に伴って花粉籠に花粉をもつ個体が増加し、体表付着花粉数も増加していた。つまり、単独性ハナバチの採餌行動はエイジの進行と卵成熟による影響を受けていることが明らかになった。以上のことから、ヒゲナガハナバチ類のメスは、成熟卵の準備段階(卵巣発達期・産卵直前)に応じて花粉の利用とそれにかかる採餌量を維持するように行動を変化させていることが示唆された。