| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第67回全国大会 (2020年3月、名古屋) 講演要旨
ESJ67 Abstract


一般講演(ポスター発表) P1-PA-093  (Poster presentation)

GPS・加速度記録および酸化ストレス計測を用いたオオミズナギドリの採餌戦略の解明
Revealing of the foraging strategy of streaked shearwaters by recording GPS and Acceleration and measurement of Oxidative stress

*小山偲歩, 水谷友一, 依田憲(名古屋大学)
*Shiho KOYAMA, Yuichi MIZUTANI, Ken YODA(Nagoya Univ.)

 野生動物は生理的な制約のもと柔軟に行動を変化させていると考えられる。野生動物の行動の柔軟性を理解するためには、行動と生理的負荷を定量化する必要がある。しかし、野生動物、特に長距離を移動する海鳥に対して、行動の記録および行動にともなう生理的負荷を定量化することは困難であった。本研究では、動物の位置情報および動きを記録するGPS・加速度データロガーと、ヒトで疲労度の指標として使用されている酸化ストレス測定を使用した。新潟県粟島で繁殖するオオミズナギドリ(Calonectris leucomelas) の採餌行動を記録し、移動距離や最大到達距離、運動量の指標であるODBAなどの採餌行動の指標を算出した。また、疲労度の指標である酸化度および回復力の指標である抗酸化力の測定により、酸化ストレス計測を行なった。得られたデータを解析することで、主に以下4つの結果を得た。
1)2018年、2019年ともに採餌行動に雌雄差は無く、行動記録中の酸化ストレスの変化量にも雌雄差はなかった。このことから、短期的にみると育雛期の採餌行動による疲労度の変化に雌雄差はないと考えられる。
2)メスの酸化ストレスは、オスの酸化ストレスより有意に高かった。このことから、育雛期よりも前の抱卵期や産卵期において、メスはオスより疲労を蓄積する可能性が示唆された。
3)2018年において、抗酸化力の変化量は翼長と正の相関があった。このことから、翼長の大きい個体は翼長の小さい個体に比べて抗酸化力、すなわち餌を獲得しやすい可能性、あるいは効率的に飛翔する可能性が示唆された。
4)2018年において、抗酸化力の変化量は、最大到達距離と正の相関があった。このことから、親鳥は繁殖地から遠い場所で自分自身のための採餌を行い抗酸化力を得ていると考えられる。また、抗酸化力の変化量は帰巣頻度と負の相関があった。このことから、親鳥は雛のために繁殖地の近くで採餌し頻繁に帰巣することで抗酸化力を消費していると考えられる。


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