| 要旨トップ | 目次 | | 日本生態学会第67回全国大会 (2020年3月、名古屋) 講演要旨 ESJ67 Abstract |
一般講演(ポスター発表) P1-PA-095 (Poster presentation)
長距離移動性の野生動物研究において、継続的な位置情報に加え、詳細な活動データを同時に取得できれば、滞在期と移動期という異なる移動フェーズの活動パターンの違いや移動フェーズ切替要因を解明できる可能性がある。そこでモンゴルの草原地帯を中心に生息し長距離を遊動的に移動する草食獣モウコガゼルに、活動・温度センサー付GPS首輪を装着し、活動パターンの実態とその季節変化や移動フェーズとの関係を明らかにすることを目的とした。2017年9月に追跡を開始し、4時間間隔の位置情報と1時間間隔の気温、6秒間の活動の有無を6分間集計した連続的な活動データ(最小値0、最大値60)を衛星電話システムで入手した。成獣メス2頭の2018年の1年間の移動と活動量の関係を解析した。2頭とも2点間最大直線距離で260㎞以上を移動し、滞在期と移動期が存在したが、同一地点で追跡を開始したにも関わらず移動時期や利用場所には個体差がみられた。滞在期と移動期で活動量に違いは認められなかった。活動パターンの季節変化には2個体で共通の傾向がみられ、活動時間帯と休息時間帯からなる数時間単位の周期と、昼と夜という1日の周期が存在した。活動量は年間を通して6-18時に大きく22-2時に小さかった。また、18-22時と2-6時では夏に大きく冬に小さかった。また夏には6-18時よりも18-22時に活動量が大きかった。以上から、モウコガゼルは明るく暑すぎない時間帯に活発なことが明らかになった。日中12時間における数時間単位の周期数は0から6回までの幅があり、春に増加し秋に減少した。この周期数の季節変化は植生状態の変化を通した採食効率の変化を反映している可能性がある。植物現存量の減少期である秋に連続的な活動周期数の減少と移動開始時期の対応関係がみられたことは活動データによる採食効率の定量化と移動フェーズ切替要因解明の可能性を示唆する。