| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第67回全国大会 (2020年3月、名古屋) 講演要旨
ESJ67 Abstract


一般講演(ポスター発表) P1-PA-098  (Poster presentation)

ツシママムシにおける餌種ごとの『捕食難易度』-資源利用の季節変動との関係性-
“Foraging difficulty" of each prey species of Tsushima island pit-viper -The relationship to seasonal variations of the resource use pattern-

*Kodama TOMONORI(Kyoto Univ.)

近年、録画技術の向上により、待ち伏せ型捕食者の野外での捕食イベントの直接記録が可能になり、野外では捕食者の攻撃成功に餌動物の回避行動が強く影響していることが明らかになっている。また餌動物の回避能力は種ごとに異なることが予想される。よって、野外における待ち伏せ場所選択には、各場所での餌動物の豊富さに加え、各場所にいる各餌種の「捕獲難易度」が餌資源要因として強く影響している可能性がある。ツシママムシ(以下マムシ)は対馬固有種であり、待ち伏せ場所と餌種を季節的に切り替え、夏季には川の本流で魚類(以下魚)を、春季と秋季には山でカエルなどの陸生の餌種(以下陸餌)を夜間に待ち伏せすることが知られている。今回、各時期の各待ち伏せ場所の餌資源量の評価およびマムシの待ち伏せ行動の録画を行い、野外における各餌種の捕獲難易度と季節的な場所選択パタンとの関係性を検討した。その結果、合計で魚に対して43回、陸餌に対して8回の攻撃が記録された。攻撃成功率(AS)は魚に対しては2.3%、陸餌に対しては25.0%であった。一方、攻撃頻度(AF: 攻撃回数/時間(h))は、魚に対しては0.547、陸餌に対しては0.075であった。本流における魚類量は6月をピークとする一峰性の季節変化を示した。一方、AFは8月、7月、6月の順で高かった。マムシの本流利用のピーク(8月)はAFのピークとのみ一致し、魚類量のピークとは一致しなかった。以上から、餌種間でASとAFにトレードオフがあることが示唆された。他種の待ち伏せ型のヘビ類では、低温下では攻撃の潜時が長くなるという知見もあるため、魚類量とAFのピークが一致しない理由として、8月に比べて6月の低い温度条件がマムシの攻撃発生の制約となっている可能性が考えられる。回避能力が高く、ASが著しく低い魚に対しては、AFを最大化できる8月のみを中心に待ち伏せするのかもしれない。


日本生態学会