| 要旨トップ | 目次 | | 日本生態学会第67回全国大会 (2020年3月、名古屋) 講演要旨 ESJ67 Abstract |
一般講演(ポスター発表) P1-PA-103 (Poster presentation)
オジロワシは世界では個体数が増加し、IUCNのレッドリストでは低危険種に分類されているが、日本の環境省のレッドリストでは絶滅危惧種Ⅱ類に分類されている猛禽類である。日本の主な生息地である北海道では、海岸部から内陸部へ生息地が拡大しているために個体数が増加傾向にあるといわれているが、その原因は分かっていない。内陸部の天塩川中流域ではオジロワシの繁殖成績が変動しつつ増加している。本研究では、オジロワシ増加の原因を探るため、繁殖成績の年次変化を気象要因を含めて時系列分析するとともに、ビデオを用いて育雛行動を観察し、両者の関係を考察した。調査は、天塩川中流域の北海道大学中川研究林で行い、気象要因を加えた繁殖成績の分析は増加傾向がみられ始めた2004-2018年で行った。さらに、巣から回収した餌残渣を用いて、実際に利用した餌の種類の割合と降水量の関係を調べた。ビデオを用いた育雛行動の観察はのべ3巣(2016-2018年)で行い、解析では親鳥の巣での滞在時間・巣への訪問回数・親鳥同士の交代回数・搬入した餌を大きさで分けたものを記録し、それぞれで比較した。繁殖成績の分析から、増加トレンドと自己回帰から期待される繁殖巣の値と実測値の偏差は降水量(5-6月)と正の回帰を示し、降水量が多い年には繁殖成績が良いことが分かった。また、降水量と餌の種類の結果から降水量が多いと魚類を多く利用することが分かった。餌の運搬回数を年次間で比較すると繁殖成績が良かった2018年で多く、年ごとの繁殖成績の変動と一致していた。一方、餌のサイズでは繁殖成績に対応した関係は見られず、良好な繁殖成績は餌のサイズにかかわらず頻繁に餌を持ち込んでいるためだと考えられた。また、降水量が餌の取りやすさに影響し、間接的に繁殖成績に影響していることが示唆された。