| 要旨トップ | 目次 | | 日本生態学会第67回全国大会 (2020年3月、名古屋) 講演要旨 ESJ67 Abstract |
一般講演(ポスター発表) P1-PA-109 (Poster presentation)
多様な種子散布方法のうち、動物散布では鳥類が重要な役割を果たしている。鳥類による被食型散布には、母樹から離れた場所へ種子を移動させるだけでなく、果肉内の発芽抑制物質の除去によって種子発芽を促進する機能も含まれる。一方で、近年各地で鳥の減少が報告されている。種子散布者である鳥が減少すると、種子散布が行われなくなるだけでなく、発芽に失敗する種子が増えることで、植物の更新動態を大きく左右する可能性がある。
そこで本研究では、名古屋大学東山キャンパスを調査地とし、1978年~2018年における47種の果実食鳥類群集の個体数解析から年変動の傾向を捉え、鳥の個体数に影響を与える要因を検討した。そして観察から鳥と果実の関係について明らかにし、果肉の有無で発芽実験を行い、実生更新への潜在的な影響を推定した。
47種の果実食鳥類のうち主な19種において動的線形モデルによる個体数解析を行った結果、メジロなど5種では増加傾向、スズメなど9種では減少傾向が認められた。要因としては、一部の鳥で気温や周辺の緑被率といった環境要因との関連性が示唆された。
26樹種において鳥が実際に採食している様子をビデオカメラまたはセンサーカメラによる撮影、もしくは目視で観察した結果、約2年7ヶ月で900羽以上の鳥が観察でき、ムクノキなどが主にメジロによって摂食されていた。また、22樹種を用いた種子の発芽実験では、ほとんどの種で果肉のない種子の方が発芽率が高く、発芽までの期間も短かったため、鳥に食べられて果肉が除去された種子の方が発芽しやすいことが推測された。
果実食鳥の個体数変動の結果、鳥の果実摂食の観察結果、果実1個あたりの平均種子数、および種子発芽率の結果を用いて、果実食鳥の個体数変化が樹木群集の更新に与える潜在的な影響を推定したところ、NMDSにより潜在的な実生群集の種組成は年によって大きく変化することが分かった。