| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第67回全国大会 (2020年3月、名古屋) 講演要旨
ESJ67 Abstract


一般講演(ポスター発表) P1-PA-115  (Poster presentation)

果実食哺乳類による種子散布環境の質的評価
Difference of deposition site quality among frugivorous mammals in vertebrate seed dispersal

*栃木香帆子(東京農工大学), 長沼知子(東京農工大学), 山﨑晃司(東京農業大学), 小池伸介(東京農工大学)
*Kahoko TOCHIGI(TUAT), Tomoko NAGANUMA(TUAT), Koji YAMAZAKI(Tokyo Univ. of Agri.), Shinsuke KOIKE(TUAT)

種子散布は、植物の個体群動態や群集構造の決定において重要なプロセスであり、種子が散布される環境は、その後の植物の定着更新の成否を決定づける。種子散布者としての役割を担っている果実食哺乳類は、移動能力や生息地選択などが種によって様々であるため、種子の散布環境も散布する哺乳類種によって異なると考えられる。したがって、各哺乳類種の散布環境の質を定量的に評価することは、植物群集全体における果実食哺乳類の種あるいは群集レベルでの種子散布者としての機能を理解することにつながると考えられる。
本研究では、果実食哺乳類による種子の散布環境の違いを評価することを目的とし、東京都奥多摩地域の落葉広葉樹林に生息する哺乳類5種(ツキノワグマ、ニホンザル、テン、タヌキ、アナグマ)に着目し、液果の種子を含んだ糞が排泄された場所の計7項目の環境要因を計測し、種間での比較を行った。
その結果、種子の発芽、実生の生育に適すると考えられる環境へ種子を散布しているのはツキノワグマとニホンザルであり、主に成熟した森林内での散布が確認された。テンは林内やギャップなど多様な環境へ散布しており、上記2種とは異なる環境への散布者として機能を果たしていることが推測された。一方で、石の上や林道などの必ずしも種子の発芽、実生の生育には適さない環境にも種子を散布していた。タヌキとアナグマはため糞という特殊な生態を持つことから、他種とは大きく異なる環境を利用していたが、種子の発芽、実生の生育には不向きな環境に種子を散布している傾向が認められた。
以上より、哺乳類種間での種子の散布場所の環境は異なっており、散布環境の特徴は各種の生態を反映していた。このように、異なる散布環境を利用する5種の果実食哺乳類が森林内に同所的に生息することは、散布環境の多様性の維持や様々な樹種の種子散布成功につながっていると考えられる。


日本生態学会