| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第67回全国大会 (2020年3月、名古屋) 講演要旨
ESJ67 Abstract


一般講演(ポスター発表) P1-PA-118  (Poster presentation)

水田における土地利用の変化が畦畔の植物-送粉者ネットワークの構造に及ぼす影響
The effects of land use changes on plant-pollinator networks in paddy fields

*冨田誠之, 平山楽, 丑丸敦史(神戸大学)
*Masayuki TOMITA, Gaku HIRAYAMA, Atushi USHIMARU(Kobe University)

 世界的に、土地利用変化が農業(半自然)生態系における送粉者や動物媒植物の多様性の減少を引き起こしている。日本の水田生態系においても集約的な土地利用(圃場整備事業)や耕作放棄によって植物・送粉昆虫が減少していることが報告されている。送粉者の種多様性の減少は、送粉ネットワークのジェネラリスト化を通じて送粉サービスの低下を引き起こしうる。本研究では、水田生態系において圃場整備や放棄が送粉ネットワーク構造に及ぼす影響を研究した。
 阪神地域の里山域に分布する伝統的に管理された水田(伝統地)、圃場整備水田(整備地)、耕作放棄水田(放棄地)を各2地点選定し、開花植物と訪花昆虫の種名・個体数を記録した。整備地や放棄地の送粉ネットワークが、伝統地に比べてジェネラリスト化しているのか定量的に示すために、9つの異なるネットワーク指標を算出した。解析では、全送粉者(及び8送粉者機能群)の種数・個体数、開花植物の種数・誘引総面積、各ネットワーク指標を伝統地と整備地・放棄地との間で比較するとともに、送粉者・開花植物種数と各ネットワーク指標との関係を調べた。
 解析の結果、伝統地に比べて放棄地では、全送粉者の種数・個体数、開花植物種数が有意に少なく、有意なネットワークのジェネラリスト化がみられた。放棄地ネットワークのジェネラリスト化は送粉者種数および植物種数の減少によってもたらされたことが示唆された。特定の大量開花した優占種へ少数の送粉者が集中したことがジェネラリスト化の要因として考えられる。
 一方、整備地では、伝統地と同程度の全送粉者・開花植物の種数・優占度が観察されたが、ハナアブの個体数のみが有意に少なかった。整備地のネットワークは、スペシャリスト化した構造がみられたが、ジェネラリストであるハナアブ類の減少がその原因ではなかった。


日本生態学会