| 要旨トップ | 目次 | | 日本生態学会第67回全国大会 (2020年3月、名古屋) 講演要旨 ESJ67 Abstract |
一般講演(ポスター発表) P1-PA-119 (Poster presentation)
増えすぎたニホンジカの採食による植生被害が各地で問題となっている。本研究では,日本全域におけるニホンジカの個体密度・生息履歴と植生被害度について検討を行った。解析には,植生学会により実施された「シカと植生のアンケート調査」(2018-2019)の結果を用いた。このアンケート調査では,日本各地の植生被害度が5段階(なし,軽,中,強,激)で記録されている。解析では,応答変数に5 kmメッシュ解像度で抽出した各メッシュセルの最高被害度を,説明変数に5 kmメッシュで集計された2014年度当初のニホンジカ推定生息密度,1978年または2003年時点の生息状況と周囲9セルのニホンジカ生息セル数を用いて分類樹モデルを作成した。変数の重要性は,2003年の周囲生息セル数で高く,次いで1978年の周囲生息セル数,2003年の生息状況であった。分類樹による解析の結果,植生被害度は比較的最近ニホンジカの生息が確認された地点で低く,生息履歴が長い地域では高くなる傾向にあった。2014年度の推定生息密度について,密度が5頭/km2以下の地域では植生被害度は低かったものの,「激」の地点では斜面崩壊や土壌流出が発生していることから,被害度にはニホンジカの個体群密度・生息履歴に加えて,傾斜角度や地盤強度が影響している可能性が考えられる。