| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第67回全国大会 (2020年3月、名古屋) 講演要旨
ESJ67 Abstract


一般講演(ポスター発表) P1-PA-120  (Poster presentation)

樹幹に付着したつる植物が幹の群集とホスト樹種へ及ぼす影響
Effects of liana attached to tree bark on bark community and host species

*日下部玄(北大・院・環境), 日浦勉(北海道大学)
*Gen KUSAKABE(Hokkaido Univ Env.sci), Tsutom HIURA(Hokkaido University)

木本性つる植物に関するこれまでの研究は直接的な競争による宿主への負の影響に注目することが多かった。しかし,つる植物が宿主へ及ぼす影響を正確に評価するには二者間の関係だけでなく第三者を介した間接的な作用も考慮する必要がある。また,多くの研究で宿主への負の影響が示される一方で,一部のつる植物では宿主の成長への負の影響が見られないことが示されている。これらの種は主に付着根によって宿主の幹を登攀し,宿主との光競争や宿主に隣接する立木への繁茂を行わない。従って,このような付着型のつる植物の生物群集に対する機能はこれまで示されてきたつる植物の機能とは異なると予想される。
本研究では付着型のつる植物の存在が宿主幹部の生物群集を変化させるか,つる植物は生物群集の変化を介して宿主に作用しているかを明らかにするため,冷温帯広葉樹林にて宿主ミズナラの幹部の生物群集と不定枝の葉の食害度をつる植物の有無で比較した。
つる植物の幹への付着によって,幹のクモ目の増加,アリ科の減少,草本の増加が見られた。採集された無脊椎動物の合計個体数とコケ被度には変化は見られなかった。またミズナラ不定枝の葉の食害度は低下した。
本研究の結果は付着型のつる植物が幹の群集組成の変化させることを示し,群集組成の変化を介して宿主の葉の食害度を変化させることを示唆する。これはこれまで見落とされてきたつる植物の機能を示すものである。


日本生態学会