| 要旨トップ | 目次 | | 日本生態学会第67回全国大会 (2020年3月、名古屋) 講演要旨 ESJ67 Abstract |
一般講演(ポスター発表) P1-PA-124 (Poster presentation)
ソラマメヒゲナガアブラムシ(以下ソラヒゲ)はカラスノエンドウ(以下エンドウ)を寄主とするアブラムシである。先行研究より、ソラヒゲはエンドウの結実を遅らせるものの、生存や種子生産には負の影響を及ぼさないことがしられている。また、エンドウにはソラヒゲ以外にも、農業害虫としてもよく知られるマメアブラムシ(以下マメアブラ)などが発生する。これらの2種のアブラムシはエンドウの同じシュート上でしばしば同時に発生するが、どちらか一方の種が優占することが多い。そこで本研究では、上記2種のアブラムシとエンドウの関係を明らかにするため、2種のアブラムシの相互作用を調査した。エンドウにソラヒゲまたはマメアブラ1頭を接種し、その後の経過を室内実験により調査した結果、実験開始16日目の時点で、ソラヒゲ接種区ではすべてのエンドウが生存していたのに対し、マメアブラ接種区では85%が枯死した。このことから、マメアブラは寄主植物の生存に大きな負の影響を及ぼすと考えられた。また、ソラヒゲあるいはマメアブラが増殖している状態のソラマメ上に他方のアブラムシを接種した場合、後から摂取した種の増殖量は有意に低下した。加えて、野外のエンドウ群落に1m²の区画を設定し、区画内の全エンドウシュート上におけるアブラムシの発生状況を調査した結果、初春にソラヒゲが優占している場所では、マメアブラが寄生しているシュートの割合は増加するもの、個体群密度は低いまま推移した。以上より、ソラヒゲとマメアブラはエンドウ上で競争関係にあること、および、エンドウとソラヒゲは、マメアブラを介して間接的な相利関係になり得ることが示唆された。