| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第67回全国大会 (2020年3月、名古屋) 講演要旨
ESJ67 Abstract


一般講演(ポスター発表) P1-PA-126  (Poster presentation)

オドリコソウの花サイズ変異は送粉者相と送粉者体サイズの地理的変異に影響される
Flower size variation of Lamium album var. barbatum (Lamiaceae) are affected by geographic variation of pollinator assemblage and pollinator size.

*石本夏海, 田路翼, 江川信, 中瀬悠太, 市野隆雄(信州大学)
*Natsumi ISHIMOTO, Tsubasa TOJI, Shin EGAWA, Yuta NAKASE, Takao ITINO(Shinshu Univ.)

植物の花筒長の変異は花粉媒介者への適応とみなされる。訪花者により引き起こされる花形質の変異は、しばしば種分化の引き金となると考えられており、訪花者相の変異と花形質の変異を種内で検出することは植物の種分化の初期段階を理解する上で重要である。我々は花筒長サイズに地理的変異のあるオドリコソウに着目し、各集団の花サイズ-訪花者サイズの対応関係を調査した。2つの山域で12集団のオドリコソウを対象に、花サイズの頻度分布、訪花者構成、訪花者サイズを調査した。その結果、オドリコソウの各集団の平均花サイズは、その集団の訪花者の平均体サイズに影響されることが示唆された。
また、10座のマイクロサテライトマーカーを用いた解析から、集団間の系統関係を推定した。結果として、集団間の系統的な関係は集団の平均花サイズとは関係なく、花サイズは各集団で送粉者サイズに対応して平行的に進化していることが分かった。
さらに、我々は花サイズが二山型の頻度分布を示す個体群に着目し、2グループの訪花者の花サイズに対する訪花行動の違いを発見した。二山型の花サイズ分布を示す集団では、小型のヤマトツヤハナバチと大型のマルハナバチ類が多く訪れていた。訪花者の行動を追跡すると、小型のヤマトツヤハナバチは小型の花に対しては葯と柱頭に接触し、送受粉に効果的な訪花行動をとっていたが、大型の花では葯と柱頭に接触せず吸蜜していた。大型のマルハナバチは小型の花への吸蜜を避け、大型の花で吸蜜する選好性を持っていた。このような訪花者の分断的な花の利用により、二山型の花サイズ分布が集団内で維持されるのかもしれない。選択勾配解析により、花サイズと結果率(雌適応度)の関係性を解析したところ、集団内の分断淘汰は検出できなかった。また、大型の花と小型の花で遺伝的分化が生じている可能性を確かめたところ、両者の間で遺伝的分化は検出されなかった。


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