| 要旨トップ | 目次 | | 日本生態学会第67回全国大会 (2020年3月、名古屋) 講演要旨 ESJ67 Abstract |
一般講演(ポスター発表) P1-PA-130 (Poster presentation)
一般に、動物媒雌雄異株植物の雌株は雄株に比べ、開花期における資源制限により小さなディスプレイサイズや花サイズしか持てず、送粉者誘引において不利であることが知られている。また、雌株では雄株とは異なる繁殖形質(繁殖形質における性的二型)を進化させることにより、ディスプレイサイズの不利を緩和していることが明らかになっている。しかし、これまでの雌雄異株植物の繁殖形質の性的二型に関する知見は、ジェネラリスト媒の雌雄異株を対象に蓄積されてきたものであり、スペシャリスト媒のものでは異なる適応がみられる可能性が高い。
本研究ではスズメガ媒雌雄異株のカラスウリを用いて、「スペシャリスト媒の雌雄異株においては、ディスプレイサイズの不利に対して適応する進化ではなく、個花サイズの不利に対して適応する進化が見られるのではないか」という新しい仮説を立て、その検証を行うことを目的とした。検証項目は、花形質に性的二型が見られるか、雌雄間でスズメガの行動に差異があるかである。また、フリンジ状花弁のスズメガ誘引や雌雄の送粉成功における役割についても実験的に検証した。これらの検証を通じて、スペシャリスト媒の雌雄異株における性的二型の進化について議論した。
ディスプレイサイズは雌株の方が雄株に比べて有意に小さかった。花サイズに性的二型は見られなかった。一方、雌花の花筒長は雄花のものより短かった。また、フリンジを除去した場合、雌雄の花への訪花数と雌花における送粉成功がコントロールに比べ有意に減少した。
カラスウリを用いた検証では概ね提案した仮説を支持する結果が得られ、スペシャリスト媒の雌雄異株植物では、ジェネラリスト媒雌雄異株とは異なる送粉者による選択圧が見られることが示唆された。この仮説は、カラスウリ以外のスペシャリスト送粉者に依存する雌雄異株植物も今後の対象として検証を行い、その一般性を確かめる必要がある。