| 要旨トップ | 目次 | | 日本生態学会第67回全国大会 (2020年3月、名古屋) 講演要旨 ESJ67 Abstract |
一般講演(ポスター発表) P1-PA-134 (Poster presentation)
果実と果実食者の相互作用は森林生態系の基礎情報として重要である。日本では、大・中規模に結実する高木から低木を対象とした被食散布の研究が進んできたが、小規模に結実する低木や草本(林床植物)にも目立つ液果をもつ種は多い。本研究では、自動撮影カメラを用いた結実期間を通した観察から、春・夏・秋冬に赤い液果を実らせる6種の林床植物と果実食者の相互作用を解明することを目的とした。
2017年と2018年に石川県金沢市角間の落葉広葉樹林のヒメアオキ(4-5月)、ニワトコ(6-7月)、カントウマムシグサ・サルトリイバラ・カラタチバナ・ヤブコウジ(10-4月)に自動撮影カメラLtl-Acorn6210を設置し、果実食者による果実利用数を定量化した。
2年間の総調査努力量は8253カメラ日で、鳥類17種と哺乳類2種が林床植物6種の果実を利用した。各季節の主要な果実食者は、春はヒヨドリ・シロハラ・クロツグミ、夏はキジバト・キビタキ・スズメ・オオルリ、秋冬はヒヨドリ・シロハラ・コマドリ・ジョウビタキであり、すべて鳥類だった。特にヒヨドリは6種、シロハラは5種の果実を利用しており、ニワトコ以外の5種では、この2種の果実利用割合が多かった。林床植物6種のうち、ニワトコ・カントウマムシグサは各9種の動物に果実が利用された。ヒメアオキ・サルトリイバラの果実径は10.0mm以上であり、口幅が大きいヒヨドリやシロハラしか丸呑みできない一方、ニワトコ・カントウマムシグサの果実径は6.5mm以下と、口幅が小さい鳥でも丸呑みできる果実であった。以上のことから、赤い液果をもつ林床植物は各季節に存在する鳥類によって多量の果実が利用され、果実径が小さいほどさまざまな鳥類に利用されることがわかった。特に春や秋冬の林床植物については、樹上を主な生息環境としているが果実選好性の高いヒヨドリや、地上採食性のツグミ類などの口幅が大きい鳥類が重要な果実食者となることが示唆された。