| 要旨トップ | 目次 | | 日本生態学会第67回全国大会 (2020年3月、名古屋) 講演要旨 ESJ67 Abstract |
一般講演(ポスター発表) P1-PA-137 (Poster presentation)
別種の植物が同所的にいることで、同種のみの場合と比べ食害が増減する現象を連合効果(連合抵抗性)という。連合効果は植食者の餌の選択性がパッチ(同所的に存在する植物の集まり)内よりパッチ間で強く見られるときに発揮される。そこで、本研究は野生のニホンジカ(以下シカ)に対する連合効果を検証することを目的とし、同所的に存在する植物種の違いで嗜好性種の被食度が異なるかを比較した。
シカの密度が高い五葉山を調査地とし、シカの嗜好性2種(アカソ、オクモミジハグマ)をそれぞれ単植した対照区と上記の嗜好性2種と不嗜好性2種(ヒトリシズカ、ミヤマイラクサ)を組み合わせた4種の混植区、計6種の処理を設置した。約2週間の調査期間中に各植物の葉の被食度を測定し、各処理間で比較した。また、シカの口が対象植物に触れた回数で選択性を評価し、パッチ間とパッチ内の選択性として処理単位の接触数と各処理内の植物株単位の接触数を測定した。
アカソの場合、対照区と混植区の被食度に差はなく、連合効果は見られなかった。シカの選択性はパッチ間とパッチ内共に弱く、これが起因したと考えられる。しかし、ミヤマイラクサ混植区よりヒトリシズカ混植区のアカソの被食度が低かった。不嗜好性種の被食度を比較するとヒトリシズカはほぼ食べられなかったが、ミヤマイラクサの被食度は高かった。このことから、不嗜好性のより強い植物が付近にいたほうが,嗜好性種は被食されにくくなる可能性がある。また、オクモミジハグマは、どの処理間でも被食度に差は見られなかった。オクモミジハグマはアカソより葉数が少ないため被食度が高くなりやすかったと考えられる。
以上のことから、同所的に存在する不嗜好性種によって嗜好性種の被食度が変わり、さらに、同所的に存在する不嗜好性種は同じでも嗜好性種の違いが被食度に影響することが示唆された。