| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第67回全国大会 (2020年3月、名古屋) 講演要旨
ESJ67 Abstract


一般講演(ポスター発表) P1-PA-139  (Poster presentation)

ミシシッピアカミミガメによる植物食害について
Feeding damage of the plant by trachemys scripta elegans

*山地優奈, 矢野興一(岡山理大・院・生地)
*Yuna YAMAJI, Okihito YANO(Okayama Univ. Sci.)

緊急外来生物であるミシシッピアカミミガメ(Trachemys scripta elegans)は、雑食性であり、幼体のころは主に魚や昆虫、甲殻類などの動物質のものを食べ、成長するにつれて藻類や種子植物などの植物質のものを好んで食べることが知られている。近年、ミシシッピアカミミガメによる日本の在来生物への影響や農作物・観賞用植物への食害についての報告がいくつかあり、問題になっている。しかし、生息域の野生植物への摂食被害の状況に焦点を合わせた研究はほとんど行われていない。そこで本研究では、岡山県内の3箇所の池から捕獲したミシシッピアカミミガメ(成体)の胃内容物と生息池の植物相を調査比較することで、本種による野生植物に対する摂食の実態を明らかにすることを目的とした。
 2018年4月から12月までと2019年4月から11月まで各月1回2日間、岡山県岡山市北区の3か所の池でミシシッピアカミミガメの捕獲と植物相の調査を行った。調査の結果、ミシシッピアカミミガメの成体をオス14個体、メス25個体の計39個体を捕獲した。また、植物相調査では35科57属70種の種子植物を採集した。捕獲したミシシッピアカミミガメの胃内容物を調べた結果、動物質のものが29%、藻類を含む植物質のものが71%であり、植物質傾向が強くなった。また、胃から出てきた種子植物中の在来種子植物種の割合は、田益63%、楢津40%、佐山57%の全体で56%であった。このことから、ミシシッピアカミミガメの成体は在来植物も含め多くの野生植物を摂食していたことが分かり、在来植物種の減少や植物を餌資源や住処としている生物に影響を与えている可能性が考えられる。また、植物種の多様性が高い池では摂食できる餌資源が豊富であり、胃内容物中の植物種数も増えたことから、生息する場所によって食べやすい資源を多く摂食していることが示唆された。


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