| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第67回全国大会 (2020年3月、名古屋) 講演要旨
ESJ67 Abstract


一般講演(ポスター発表) P1-PA-144  (Poster presentation)

琵琶湖沿岸に生息するエビノコバンTachaea chinensisの宿主利用
Host choice of Tachaea chinensis at Lake Biwa

*前田陽也(滋賀県立大学)
*Haruya MAEDA(University of Shiga Prefecture)

エビノコバンはワラジムシ目ニセウオノエ科の一種で、淡水産エビの頭胸部に寄生する外部寄生虫として知られている。エビノコバンはこれまで数種類の淡水産エビへ寄生することが報告されてきたが、単なる宿主ジェネラリストではなく、好みが存在する可能性も示唆されている。本研究では宿主エビと寄生虫の採集及び選択実験によって、選択的な寄生の有無及び宿主探知の要因を明らかにし、エビノコバンの宿主利用様式についてより詳細に検討した。
寄生虫と宿主は琵琶湖沿岸(滋賀県彦根市)で採集した。宿主選択実験はエビノコバンに二種類の宿主エビ(スジエビ、ヌマエビ類)を選択させ、寄生率の差を分析した。また、エビノコバンが宿主を探知する方法を明らかにするため、明条件、暗条件、明条件かつ宿主移動制限、暗条件かつ宿主移動制限の4つの実験区を設定し同様に宿主選択実験を行った。また、宿主2種にそれぞれ小型のエビノコバンを寄生させて育成し、宿主の違いがエビノコバンの生存や成長に与える影響を調べた。
採集の結果、全長6mm以下のエビノコバン(マンカ幼生及び小型成体)はスジエビとヌマエビ類両方に同程度の感染率で寄生し、全長6mm以上のエビノコバン(大型成体)はスジエビにのみ寄生することが明らかとなった。宿主選択実験では、全ての実験区においてエビノコバンがヌマエビ類よりもスジエビを選択する結果となった。野外と実験とで異なる結果が得られた理由として、小型個体を用いた育成実験と先行研究から、マンカ幼生が寄生する宿主種を選択しないことで、自身の生存率を増加させていることや、マンカ幼生と小型成体が大型スジエビにより捕食されていることが考えられた。宿主選択実験の結果より、エビノコバンは視覚及び宿主エビの活動による受動的な接触以外の方法で宿主を認知していると考えられた。


日本生態学会