| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第67回全国大会 (2020年3月、名古屋) 講演要旨
ESJ67 Abstract


一般講演(ポスター発表) P1-PA-145  (Poster presentation)

サンコウチョウにおける遅延羽色成熟の意義
Significance of Delayed Plumage Maturation in Black paradise flycatcher

*能重光希(北海道大学院・理), 植村慎吾(北海道大学院・理), 大井紗綾子(元大阪市立大学院・理), 髙木昌興(北海道大学院・理)
*Koki NOJU(Hokkaido Univ.), Shingo UEMURA(Hokkaido Univ.), Sayako OI(Pre Osaka city Univ.), Masaoki TAKAGI(Hokkaido Univ.)

動物の外見は配偶者選択の重要な指標となり、選ばれる側の性に装飾的な形質が発現す
る。一部の鳥類のオスでは、性的に成熟し繁殖可能なものの、羽衣は成熟していない遅延羽衣成熟という現象が知られる。遅延羽衣成熟の適応的な意義は、未だに不明な点が多い。これは遅延羽衣成熟を示す鳥類の多くが、外見が連続的に変化するため個体の年齢を外見から判断することが難しく、外見の成熟度合いと行動・さえずり・繁殖成績の関係を結び付けにくいことが原因だ。
遅延羽衣成熟はスズメ目の多くの分類群で見られる現象であることから、この現象の適応的意義を明らかにすることは、鳥類の羽衣における自然選択と性選択のトレードオフ関係がどのように進化したかを明らかにすることにつながる。
サンコウチョウ Terpsiphone atrocaudata は年齢に応じて外見が、若い順から① 羽色が茶色で尾羽は短い ② 羽色が黒色で尾羽は短い ③ 羽色が黒色で尾羽は長い羽色という
3タイプに明瞭に分かれる種であるため、これまでの遅延羽衣成熟研究の課題をクリアした、研究に適した種であると考えられる。
本研究ではサンコウチョウのオス個体の外見タイプ毎に、繁殖地に渡来する早さ、さえずりの周波数と速さ、同性個体間の闘争、営巣場所の環境 の4項目に分けて評価し、結果を比較することで、サンコウチョウにおける遅延羽衣成熟の適応的意義を検討した。
年長個体は若い個体よりも早く渡来し、上方向が良く隠れた場所に営巣していた。
一方、若い個体は年長個体との激しい闘争を避け、怪我や消耗を避けていると示唆された。


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