| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第67回全国大会 (2020年3月、名古屋) 講演要旨
ESJ67 Abstract


一般講演(ポスター発表) P1-PA-146  (Poster presentation)

市街地植生におけるクチベニマイマイの移動能力と利用植物
Movement ability and utilization plants of Euhadra amaliae in urban vegetation

*吉村理(龍谷大・院・理工), 野村将一郎(龍谷大・院・理工), 森脇優介(龍谷大・院・理工), 太田真人(龍谷大・RCSS), 遊磨正秀(龍谷大・理工・RCSS)
*Osamu YOSHIMURA(Ryukoku U., Grad Sc Sci -Tech), Shoichiro NOMURA(Ryukoku U., Grad Sc Sci -Tech), Yusuke MORIWAKI(Ryukoku U., Grad Sc Sci -Tech), Masato OTA(Ryukoku U. RCSS), Masahide YUMA(Ryukoku U., Ryukoku U. RCSS)

 クチベニマイマイEuhadra amaliaeは近畿地方から中部地方西部にかけて分布し、生活史の大半を樹上で過ごす樹上性の陸産貝類である。同じ樹上性のサッポロマイマイEuhadra brandtii sapporoでは春先に樹上へ、秋の終わりに落葉の積もった地表へ季節的な移動を行うことで、活動期の捕食を回避し生存率を高め、樹上の餌資源を利用することが報告されているが、クチベニマイマイで同様の季節的移動や食性を示した報告はない。本種は特定の樹木に樹種選好性を持つ事が示唆されているが、植生の異なる環境での知見が不足している。本研究はマーキング調査、植生調査、個体分布調査、安定同位体比分析を行うことで、クチベニマイマイの生態と利用植物、特に移動能力の解明を目的とした。調査は2018年8月7日~2019年9月27日にかけ、滋賀県大津市の法面植生で行った。
 クチベニマイマイは調査地内での分布が局所的で、個体の多くは位置と付着高が1.5~2.5m、照度が4000lx以下の場所に発見された。局所的になった要因には、本種の大半の個体で移動能力が低かった可能性が挙げられるが、一方でつる植物を利用し1日で最大13.7mの距離を移動したと推測される個体も確認された。また、樹上性のサッポロマイマイと同様に活動期は樹上で活動し、非活動期は地表へ降りる季節的な移動を行うことが示唆された。なお、本種は梅雨期にキクラゲAuricularia auriculaの子実体の摂餌が確認され、同位体比分析と調査期間中の観察より、植物の表面に付着した微細な藻類や菌類を摂餌していると考えられた。本研究では、樹種選好性は見られなかったが、成貝は樹木の幹、未成貝は葉の表裏に付着していたことから、個体の成長に伴い付着位置が変化すると考えられた。なお、本種は多様度指数Dが高い環境、すなわち複数種の樹木が存在する環境で多く生息することが示唆されたため、先駆植物が主要な調査地で定期的に伐採が行われてきたことが、本種の生息に適していた環境を維持していたと推測される。


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