| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第67回全国大会 (2020年3月、名古屋) 講演要旨
ESJ67 Abstract


一般講演(ポスター発表) P1-PB-147  (Poster presentation)

環境DNAによる魚類繁殖期の推定
Estimating the breeding period of wild fish using environmental DNA

*呉盧漢(神戸大・院・発達), 姜明揚(神戸大・院・発達), 山本義彦(大阪環農水研・多様性, 神戸大・院・発達), 稲川崇史(応用地質(株)), 沖津二朗(応用地質(株)), 源利文(神戸大・院・発達)
*Luhan WU(Grad Sc Human Dev Env, Kobe U), Mingyang JIANG(Grad Sc Human Dev Env, Kobe U), Yoshihiko YAMAMOTO(Biodiv. C. Osaka, Grad Sc Human Dev Env, Kobe U), Takashi INAGAWA(OYO Corporation), Jiro OKITSU(OYO Corporation), Toshifumi MINAMOTO(Grad Sc Human Dev Env, Kobe U)

 繁殖が成功するかどうかは外来魚の個体群の成立に直接関連する。外来魚が繁殖に適する水域に侵入すると、迅速に繁殖し、在来魚と餌や生存空間を巡って競争し、最終的には多様性や生態系バランスの乱れを引き起こす。そのため、外来魚の繁殖期や繁殖地を把握することは重要である。しかし通常の方法では、外来魚の繁殖期を調査するために、成魚、未成魚、卵の採集が必要であり、労力がかかる。そこで、魚類の繁殖期をより簡単に調査する方法の確立が必要である。体外受精の動物の繁殖期には大量の精子が水に放出されるため、魚類の環境DNA濃度が上昇すると考えられる。また、精子にはミトコンドリアが少ないため、魚類が大量に精子を放出すると環境中の魚類の核DNA/ミトコンドリアDNA比も上昇すると考えられる。これらの仮定をもとに、環境DNAを用いた外来魚の繁殖期を調べる手法の確立を試みた。
 まず、水槽実験で、コイの繁殖前後に採水して、環境DNA濃度の変化を調べたところ、繁殖前後の環境DNAの濃度と核DNAの比率の増加が検出された。次に水槽実験の結果を検証するために、野外調査を行った。2019年の3月から8月まで、三春ダムで週一回採水してコイ、オオクチバスとブルーギルの環境DNA量および核DNAの比率の変化を調べた。その結果、魚種によって異なる時期に環境DNA濃度と比率が増加することが確認された。これらの結果から、環境DNA濃度の変化および核DNA/ミトコンドリアDNA比の変化は魚類の繁殖期の推定に利用可能であると考えられる。しかし、環境DNA濃度のピークと比率のピークは一致しない場合もあった。環境DNAを用いて外来魚の繁殖期や繁殖地を正確に推定するために、継続的な研究が必要である。


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