| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第67回全国大会 (2020年3月、名古屋) 講演要旨
ESJ67 Abstract


一般講演(ポスター発表) P1-PB-148  (Poster presentation)

スズメの親子関係がもたらす雌雄の育雛貢献度の違い
Genetic parent-offspring relationships predict sexual differences in contribution to parental care in the Tree Sparrow

*坂本春菜, 植村慎吾, 髙木昌興(北海道大学)
*Haruna SAKAMOTO, Shingo UEMURA, Masaoki TAKAGI(Hokkaido University)

鳥類の多くは社会的に一夫一妻の繁殖システムをもつが、つがい外父性や種内托卵などの代替戦術をとる。そのため、一腹雛でも父性と母性が様々に異なる。雛間の親子関係を丁寧に解析し、雌雄の育雛貢献度や雛の成長率との関連を明らかにすることで、繁殖システムの進化要因の理解を進めたいと考えた。そこで本研究では、予備観察から種内托卵とつがい外父性が生じている可能性が高いスズメ(Passer montanus)を研究材料にした。営巣環境や個体数動向などの研究例は非常に多いが、繁殖生態はほとんど未解明のままである。2019年3~8月、北海道大学札幌キャンパス構内に巣箱を設置し、自然巣を含む17巣の繁殖を追跡した。親子の個体標識と計測及び血液サンプルの採取を行い、雛への給餌回数から雌雄の育雛貢献度を調べた。その結果、15巣中5巣は片親の雌のみで育雛していること、両親で育雛している巣も雌雄の育雛貢献度は大きくばらつくことが分かった。また孵化率が低く、雛間の大きな体重格差や巣内餓死が多く観察された。そこで、両親で育雛している巣(n=7)に対して、マイクロサテライトDNAを用いた親子判定により父性を調べた。その結果、つがい外子を一羽以上含む巣は少なくとも2巣、父性が確定した雛(信頼区間90%)11個体のうち、2個体がつがい外子だった。つがい内子とつがい外子の体重を比較したところ、両者に違いはなく、雛の成長には影響がないことが分かった。未孵化卵や巣内餓死した個体に対しても親子判定を行い、種内托卵による子の排除の可能性を含めて検討する予定である。


日本生態学会