| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第67回全国大会 (2020年3月、名古屋) 講演要旨
ESJ67 Abstract


一般講演(ポスター発表) P1-PB-154  (Poster presentation)

佐渡島の河川におけるイワナの食性についての研究
Study on food habits of ''Salvelinus pluvius'' in Sado Island

*青木大樹, 北橋隆史, 満尾世志人(新潟大学)
*Daiki AOKI, Takasi KITAHASI, Yosito MITUO(Niigata University)

 河川環境の保全を考えるにあたって重要な種となるのが、河川の食物網上位捕食者であるサケ科魚類である。佐渡島には主なサケが魚類としてイワナが生息している。佐渡島は他地域には生息している天敵となる生物が生息しないなど、イワナにとって特有な環境である。このため本研究では、佐渡島のイワナが生息する河川環境とその周辺環境の関連性を明らかにするために、イワナの食性の解明を目的とした。
 新潟県佐渡市佐渡島の外海府側の5河川にて調査を行った。河川の下流部から上流部を移動しながら主に釣りでイワナを捕獲した後に解剖し、胃内容の生物を目ごとに分類した。捕獲後、体長・体重・胃内容重量などを測定した。その結果、佐渡島のイワナは陸生昆虫が主要な餌資源であることが明らかになった。本州地域では主に利用されている水生昆虫は、佐渡島では通年利用の割合が低かった。体長別にみると、小さいほど水生昆虫を利用し、大きくなると高次捕食者を利用するという傾向がみられた。季節や植生の被度によっても食性が変化した。イワナは餌資源を受動的に捕食するため、餌資源がその環境に生息しているかどうかが重要であり、季節変化による餌資源の供給の変化が、そのまま食性の変化に繋がっている。佐渡島では、河川上の植生被度が高く、陸生昆虫の供給量が多いため、主に陸生昆虫を利用し、水生昆虫の利用割合は少なくなったと考えられる。また、カエルをはじめとした高次捕食者が多く利用されていることが佐渡島の特徴であった。佐渡島では天敵の影響が少なく、大型のイワナが多く生息する。イワナは体長が大きくなると口が大きくなり、物理的に捕食が困難であった高次捕食者を捕食できるようになると考えられる。このため佐渡島ではカエルなどの高次捕食者を多く利用していると考えられる。


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