| 要旨トップ | 目次 | | 日本生態学会第67回全国大会 (2020年3月、名古屋) 講演要旨 ESJ67 Abstract |
一般講演(ポスター発表) P1-PB-155 (Poster presentation)
日本の分布の北限で石川県輪島市~羽咋郡志賀町の海岸沿いに孤立して生息するシルビアシジミ能登半島亜種の越冬時の生態や条件に関しては良く分かっていない。断片的な報告として20℃において冬休眠条件の臨界日長が大阪空港周辺産より1時間20分長いこと(平井規央ほか)、4℃12時間未満短日長下での飼育実験(蓑原茂ほか)から、完全休眠せず越冬中も食草が必要という意見がある。しかし、生息地の気象条件に近い状態での越冬実験が必要と考え、越冬時の条件を日長時間、日中の最高気温、積雪、食草の有無、幼虫齢数について注目し飼育実験を行った。過去の飼育と調査結果から10月1日~翌年4月30日までの1日の気温変化を気象庁の過去30年間のデータを半月ごとの平均で、日の出・日の入り時間を国立天文台の計算を用いて半月ごとにシミレーションし越冬飼育条件とした。2019年7月6日に2産地で採集した6メスに強制産卵させ、 7月11日~10月10日までを野外の10月1日~12月31日に相当する越冬準備期間として飼育し、得られた83幼虫を使って10月11日~翌年2月10日まで越冬飼育実験を行った。
実験結果から、シルビアシジミ能登半島亜種は12時間未満の短日長および最高気温が幼虫活動限界気温と思われる10℃前後で完全な冬休眠に入り、幼虫の齢数が3齢以上、短日長下で最高気温が5℃以上であれば食草の有無に関係なく越冬が可能なことが分かった。 2齢以下では食草が無いと生存率が非常に悪くなる。また、数回の積雪があると越冬後死亡し、冬の強風により雪が積もりにくい石川県輪島市の海岸でのみ生息している要因と考えられる。最高気温10℃以上で日長時間が12時間を超えることが冬休眠打破に必要と思われる。