| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第67回全国大会 (2020年3月、名古屋) 講演要旨
ESJ67 Abstract


一般講演(ポスター発表) P1-PB-159  (Poster presentation)

対馬暖流域の島嶼におけるヨシノボリ属の仔魚期の海洋生活期間
Pelagic larval duration of genus Rhinogobius in the islands of Tsushima Current region

*木戸杏香(新潟大院自然科学), 白井厚太朗(東大大気海洋研), 飯田碧(新潟大佐渡セ臨海)
*Kyoka KIDO(Grad.Sch.Sci. Niigata Univ.), Kotaro SHIRAI(AORI Univ. Tokyo), Midori IIDA(SMBS, Niigata Univ.)

 対馬暖流域の島嶼である佐渡島・隠岐諸島・対馬には、主に両側回遊型のハゼ科ヨシノボリ属魚類が生息している。両側回遊は海と川とを行き来する通し回遊の1つで、両側回遊魚は、河川で孵化した後、海へと流下して成長する海洋生活期間を持つ。その後、河川へと加入し、再び成長する。本属について、回遊型の研究例はあるが、海洋生活期間の日数は不明である。本研究の目的は、ヨシノボリ属3種(シマヨシノボリ・ルリヨシノボリ・ゴクラクハゼ)において、耳石を用いて海洋生活期間を明らかにすること、また、環境による変動を明らかにすることである。
 3つの島嶼に島嶼以外の環境として上越と高知を加えた5つの地域で、2017年5月~2019年11月に環境調査と採集を行った。佐渡島のシマヨシノボリ(n=63)の海洋生活期間は26~46(平均36.7)日間、ルリヨシノボリ(n=51)は26~56(37.4)日間で、2種間に差はなかった。また、佐渡島は、島内で環境が異なるため4地域に分けて比較を行ったが、両種とも地域間において差はなかった。また、シマヨシノボリについて地域間で比較したが、隠岐諸島(n=7)は27~40(33.3)日間、対馬(n=18)は26~60(38.6)日間となり、3地域間で差はなかった。3地域で採集されたゴクラクハゼ(n=12)では、対馬でやや長い傾向がみられた。佐渡島や隠岐諸島のシマヨシノボリでは、上越(n=8, 32~42(36.0)日間)とは有意差はなかった一方、高知(n=5, 39~53(43.8)日間)はそれらより有意に長く、他の両側回遊魚と逆のパタンを示した。これらの違いには、島嶼と本州という環境の違いだけではなく、海水温などの様々な環境要因が推測される。本研究の結果より、ヨシノボリ属の海洋生活期間には種間や地域間に多様性があり、それらは様々な要因からの影響が示唆された。


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