| 要旨トップ | 目次 | | 日本生態学会第67回全国大会 (2020年3月、名古屋) 講演要旨 ESJ67 Abstract |
一般講演(ポスター発表) P1-PB-160 (Poster presentation)
かつて広域かつさまざまな環境に生息する普通種であったが、分布域が著しく減少した両生類の一つがアカハライモリである。アカハライモリは、地域によって分化が進み固有の表現形質を有する6つの地方種族に分けられ、遺伝的には4つの集団が認識されている。このような種を対象として、保全対策を講じるためには、残された生息地を正確に把握し、メタ個体群の空間構造を把握するとともに、個別の局所個体群の存続可能性を評価するための個体群統計学的研究が不可欠である。
関東地方に分布する固有の遺伝的集団は、東京都を含む南関東での減少が著しいが、千葉県北部には、下総台地に刻まれた谷津田に孤立した集団が複数散在している。そこで、本研究は、最も孤立した状態にありながら、個体数がまとまって確認された千葉県白井市と印西市の集団を対象として、3年間の標識再捕獲調査を実施し、個体群統計学的解析による現状把握に努めた。
調査地は約2haの孤立した谷津である。3年間の再捕獲履歴から、Cormack-Jolly-seber法を用いて推定された個体数は600-1000個体であった。個体群の年齢構成を指の骨組織を用いた年齢査定によって調べたところ、性成熟年齢は雌雄ともに3、4歳で、雌雄ともに3-5歳の若い個体が9割を占めていた。一般に長寿とされているイモリではあるが、本個体群における性成熟後の繁殖参加回数は1~2回と少なかったことから、繁殖の失敗や商業的乱獲等によって、容易に局所的絶滅に至る危険性が高いと考えられた。