| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第67回全国大会 (2020年3月、名古屋) 講演要旨
ESJ67 Abstract


一般講演(ポスター発表) P1-PB-162  (Poster presentation)

標識再捕法による佐賀平野のアリアケスジシマドジョウの生活史と繁殖生態の解明
Life history and reproductive ecology of Cobitis kaibarai elucidated by mark-recapture surveys in the Saga Plain

*尋木優平, 明石夏澄, 原本すみれ, 喜多章仁, 望岡佑佳里, 松田浩輝, 徳田誠(佐賀大・農)
*Yuhei TAZUNOKI, Kasumi AKASHI, Sumire HARAMOTO, Akihito KITA, Yukari MOCHIOKA, Hiroki MATSUDA, Makoto TOKUDA(Saga Univ.)

日本産スジシマドジョウ類の多くは絶滅の危機に瀕しており、早急な対策が必要とされているが、生態が未解明の種も多く、保全に必要な情報が不足している。北部九州の有明海流入河川にのみ生息するアリアケスジシマドジョウも、近年の圃場整備の進行に伴って生息環境の悪化や個体数の減少が報告されており、環境省第4次レッドリスト(2013)において絶滅危惧種ⅠBに指定されているが、生活史や繁殖生態は未解明である。そこで本研究では、佐賀平野で本種の生活史と繁殖生態の調査を実施した。生活史の調査は佐賀市の2地点(地点1、地点2)で2015年11月から毎月実施した。さで網を用いて努力量60分の定量捕獲調査を行い、体長、性別、雌の腹部の太さを記録するとともに、イラストマー蛍光標識により個体識別して再放流した。また、再捕獲データを基にJolly-Seber法による両地点の生息個体数や移出入などを推定した。繁殖生態の調査は、佐賀県多久市において2018 ~ 2019年の5〜6月に実施した。調査地の水質を測定し、たも網を用いた定量捕獲調査を行い、捕獲個体の体長を測定した。本種の捕獲個体数は、夏期に少なく、冬期に多かった。生息個体数は、地点1が1,000~2,000頭、地点2が150~200頭と推定された。雌の腹部の太さは5月下旬から6月上旬にかけて増加し、その後減少した。また、7月から幼魚が捕獲された。以上から、本種の繁殖時期は6月上旬から7月上旬であることが示唆された。春に標識した個体が秋以降にも再捕獲される事例が見られたことから、一部の個体は2年間以上生存すると考えられた。繁殖場所の調査で、稚魚は6月からの増水によって出現した浅瀬の部分で確認され、深瀬では捕獲されなかった。一方、成魚は深瀬のみで捕獲された。したがって、本種は一時的に浅瀬に移動して産卵している可能性が高いと考えられた。


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