| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第67回全国大会 (2020年3月、名古屋) 講演要旨
ESJ67 Abstract


一般講演(ポスター発表) P1-PB-163  (Poster presentation)

南極産ヒルガタワムシの生活史解明
Elucidation of life history of Antarctic bdelloid rotifer

*Tomotake WADA(SOKENDAI), Sakae KUDOH(NIPR)

ヒルガタワムシは、広範かつ豊富な分布が南極でも知られている土壌や水圏で活動する微小無脊椎動物の1群である。これまで、南極大陸で18種のヒルガタワムシが報告されており、そのうち12種が固有種として知られている。昭和基地がある宗谷海岸周辺では、ヒルガタワムシの存在報告があるものの、分布、存在量、種の同定については未知であった。2019年夏季の南極宗谷海岸の露岩域湖水、堆積物、土壌サンプルを収集し、ヒルガタワムシ類の分布の調査研究を開始したところ、一つの露岩域、スカルブスネスの親子池周辺の湿地でオレンジ色のヒルガタワムシの群集パッチを発見した。南極から持ち帰ったコロニーの凍結サンプルを用いて、これまでの培養研究と南極産クマムシの培養方法に基づいて培養を行い、生活史の解明を試みた。融解したサンプルに水を加え、5℃のインキュベーター内で、1日1回成長過程を顕微鏡観察して確認した。培養で得られた個体の形態学的特徴は南極固有種として報告されているPhilodina gregariaと一致した。3日後に乾眠状態から目覚めて成長と成熟を開始し、2ヶ月後には体内で卵が見つかった。卵は母親の体内で孵化し、親から出産された次世代の個体(体サイズ:約150μm)が体外へと出て、成長し始めた。親個体と同じサイズ(約800μm)に達するには10日かかり、その後成熟し約2ヶ月以内に卵を産み始めた。現在培養は第二世代へと進んでいる。


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