| 要旨トップ | 目次 | | 日本生態学会第67回全国大会 (2020年3月、名古屋) 講演要旨 ESJ67 Abstract |
一般講演(ポスター発表) P1-PB-164 (Poster presentation)
干潟は、水質浄化や漁業資源となる生物の生息場、海岸線の保全など様々な役割を持つ。また、この干潟の生態系を構成する生物の内、ベントス(ここでは2㎜以上の底生動物を指す)は浄化作用や他生物の餌となるなど、生態系内では重要な役割を持つ。既往研究から、ベントスの出現傾向は干潟の地形や底質環境で決定されると考えられているが、それを定量的に評価した研究は少ない。特に瀬戸内海に面する広島県は、少なくとも53か所の干潟が確認されているものの(清木ら、2000)、ベントスに関する研究事例は少ない。そこで本研究では広島県内の干潟において、ベントス群集の空間的な変異をとらえ、その要因を明らかにすることを目的とする。
最初に広島県内の干潟を、東西にわたって偏りがないように31地点選定した。各干潟では5m四方の方形区を、干潟面積や見かけの底質環境に応じて複数設置した。方形区内部でシャベルによる掘りかえしを10分間行い、発見したベントスの種名を記録した。その結果を用いて31地点の全方形区(406個)を階層クラスター分析(Bray-Curtis指数、Ward法)により、複数の群集に分類した。そこから一つの群集が卓越している干潟と複数の群集が混在する干潟をそれぞれ選定して、前者からは5個の、後者からは全ての方形区を抽出し、表層5㎝までの底土を採取して粒度組成・含水率・強熱減量を測定した。
調査の結果、216種のベントスが確認された。群集タイプは7つに分類され、底質環境もそれに応じた変化が見られた。例として、スジホシムシモドキやマテガイなどが見られる群集タイプは粗砂率と中砂率が高く、河口から遠い場所に集中し、ハクセンシオマネキやヒメアシハラガニが見られる群集タイプは細砂率とシルト・クレイ率が高く、河口に近い場所に集中していた。また、多くの種が同程度の割合で見られた群集タイプは、前述した2タイプの中間に集中し、粒度組成も中間的な割合を示していた。