| 要旨トップ | 目次 | | 日本生態学会第67回全国大会 (2020年3月、名古屋) 講演要旨 ESJ67 Abstract |
一般講演(ポスター発表) P1-PB-167 (Poster presentation)
ため池は,稲作を中心とした日本において農業用水の確保・供給を目的とした灌漑施設として築造されてきた.海外では,河川や湖沼に比べて池の生物多様性は高く,面積当たりの希少種や絶滅危惧種の生息割合が高いことが報告されている.日本国内のため池に関しても海外と同様に,多様性や固有性の高い生物相を有し,止水環境を好む絶滅危惧種の重要な生息環境となっていることが報告されている.近代以降,ヨーロッパ諸国や日本では急速にため池が減少している.その主な原因は,灌漑用水の利用停止や自然災害によるため池の決壊,池の利用が停止したことによって植生が遷移し水面が消失したためである.このことから,中山間地では管理の行き届いたため池が全国的に減少傾向にあり,生物多様性に富んだため池をどのように保全していくのか課題が多い.
止水域の代表的な節足動物であるトンボ目は,これまで環境指標生物として注目されてきたが,ため池など止水域のより詳細な食物網の評価にあたっては,新たな指標が必要かもしれない.本研究では,環境の異なるため池について,ため池に生息する節足動物相,特に水面に生息する水生半翅類の多様性の違いがため池にどのような影響を及ぼしているかについて調査を実施した.
調査は,熊本県内の8地点を対象に,水面に生息する節足動物を対象としたコドラート法とトンボ目を対象としたルートセンサス法とタモ網を用いたすくい取り法を行った.
本調査で得られた水面に生息する節足動物相を含む調査結果から指標種を選定し,指標種に基づく保全上重要な止水域の選定を試みる.