| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第67回全国大会 (2020年3月、名古屋) 講演要旨
ESJ67 Abstract


一般講演(ポスター発表) P1-PB-174  (Poster presentation)

哺乳類環境DNAメタバーコーディング手法による薬剤耐性菌保菌動物の推定
Estimation of reservoir animals of antibiotic resistant bacteria  by environmental DNA metabarcoding for mammals

*速水花奈(神戸大・院・発達), 坂田雅之(神戸大・院・発達), 荒谷朋紀(岐阜大・院・連合獣医), 浅井鉄夫(岐阜大・院・連合獣医), 源利文(神戸大・院・発達)
*Kana HAYAMI(Kobe Univ.), Masayuki K. SAKATA(Kobe Univ.), Tomoki ARATANI(Gifu Univ.), Tetsuo ASAI(Gifu Univ.), Toshifumi MINAMOTO(Kobe Univ.)

抗菌薬治療を困難にする薬剤耐性は世界中で深刻な問題となっている。薬剤耐性菌のなかでも医療上重要な薬剤に耐性を示す基質特異性拡張型β-ラクタマーゼ(ESBL)産生菌は近年著しく増加しており、臨床環境のみならず野生動物や河川、湖などの自然環境を含む一般環境への拡がりが懸念されている。一方、河川などの自然環境から薬剤耐性菌が分離されているものの、その由来は明らかになっていない。そこで本研究では、河川中に存在するESBL産生菌を調べ、環境DNAメタバーコーディング手法と組み合わせることで、その産生菌を保菌していた可能性のある動物種の推定を試みた。岐阜県内の伊自良川において2019年4月から11月にかけて調査を行い、計31サンプルの水をサンプリングし、薬剤耐性菌の分離を試みるとともに、MiMammalプライマーを用いてメタバーコーディング解析を行った。そして、哺乳類環境DNAメタバーコーディング手法における各検出種の出現頻度および薬剤耐性菌と検出種との関連性を検証した。その結果、哺乳類16、魚類43、鳥類3、そして爬虫類2の計64種のDNAが検出された。ESBL産生菌の分離実験ではEscherichia coli、Klebsiella pneumoniae、Aeromonas spp.の3菌種が特定され、ヒト、ペットまたは家畜に分布するCTX-M型ESBLを産生した。これら3菌種の出現と各動物種のDNA検出との関連を、一般化線形混合モデルを用いて解析した結果、ニワトリのDNAが検出される割合が高いときに、CTX-M型ESBL産生E. coliが分離されることが明らかになった。調査河川の流域にある養鶏関連施設からの排水が関連する可能性が考えられた。本研究により、生息動物の推定と同時に、野外に存在する薬剤耐性菌を分離することで、環境DNA分析が保菌動物の候補を推定する上で強力なツールとなりうることが示唆された。本手法を用いて候補動物種を絞り込むことで、これまで明らかにされていなかった野外における薬剤耐性菌の保菌動物の特定に貢献できるだろう。


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