| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第67回全国大会 (2020年3月、名古屋) 講演要旨
ESJ67 Abstract


一般講演(ポスター発表) P1-PB-176  (Poster presentation)

北海道におけるサワガニGeothelphusa Stimpson, 1858の学術的報告
First scientific record of freshwater crabs of the genus Geothelphusa Stimpson, 1858 in Hokkaido, Japan

*杉目良平, 古瀬克己, 岸田治, 奥崎穣(北海道大学)
*Sugime RYOHEI, Kastumi FURUSE, Osamu KISHIDA, Yutaka OKUZAKI(Hokkaido Univ.)

サワガニ科Potamidaeは海洋でのプランクトン幼生の生活史段階を持たず、山間や森林を流れる河川に生息する。卵は他科と比べて比較的大きく、幼体はカニの形態を持って孵化する。サワガニ科サワガニ属Geothelphusa Stimpson1858は、東アジアに分布する56種で構成され、台湾(38種)、南西諸島(15種)、日本列島の青森県以南(3種)に分布するといわれており、これまでに北海道でのサワガニ属の生息に関する学術的な報告はない。我々は2018年9月28日に北海道渡島半島の1河川にてサワガニ属の一種の生息を確認した。捕獲調査において、オス12個体、メス7個体(稚ガニを抱える個体を含む)、二次性徴のみられない未成熟個体60個体(内当年個体35個体)、計79個体が捕獲され、成熟個体の形態的特徴からサワガニG. dehaaniと同定された。稚ガニを抱えるメスが捕獲されたことから、当河川において、この個体群は繁殖していることが確認された。
現状として、このサワガニ個体群が北海道在来であるかどうかの判断はできていない。これを検討するためには、分子系統解析を行い、日本列島の各地域のサワガニ個体群と北海道の個体群の系統関係を明らかにする必要がある。また、北海道渡島半島の複数の河川を調査することで分布域を明らかにし、その分布域と人の居住圏に関係性があるかどうかということも重要な判断基準の一つとなるだろう。


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