| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第67回全国大会 (2020年3月、名古屋) 講演要旨
ESJ67 Abstract


一般講演(ポスター発表) P1-PB-182  (Poster presentation)

標高の異なる山岳湿原群における植物-送粉昆虫ネットワーク構造の検証
Plant-pollinator network structure in subalpine moorlands differing in altitude

*松原夏生(横浜国立大学), 内田圭(東京大学), 橘太希(横浜国立大学), 巻島大智(横浜国立大学), 後藤亮仁(横浜国立大学), 内原彰子(横浜国立大学), 佐々木雄大(横浜国立大学)
*Natsuki MATSUBARA(Yokohana National University), Kei UCHIDA(The University of Tokyo), Taiki TACHIBANA(Yokohana National University), Daichi MAKISHIMA(Yokohana National University), Akihito GOTO(Yokohana National University), Shoko UCHIHARA(Yokohana National University), Takehiro SASAKI(Yokohana National University)

山岳地域の湿原にはさまざまな固有植物種や希少植物種が生息しており、その多くが昆虫に送粉を依存している。結果、植物-送粉昆虫間には複雑な相互作用ネットワーク(以下、送粉ネットワーク)が形成される。湿原は一般に、花の密度が高いことが知られており、送粉者にとって重要な資源獲得の場であると考えられる。山岳地域における標高傾度に沿った生物相の変化についての先行研究では、送粉ネットワークの構造が標高傾度に伴って変化することが知られている。一方、植物相は標高が高くなるほど開花フェノロジーが遅延するため、同時期での開花状況が標高間で異なってくる。しかし先行研究では、標高に伴う環境要因の違いと開花フェノロジーの遅れに対する送粉者の反応を分離できていなかった可能性がある。本研究では、山岳地域の湿原において、標高やそれに伴う植物群集の変化に対する送粉ネットワークの変化を明らかにすることを目的とした。調査は7月と 8月、青森県八甲田山系の湿原群のうち標高の異なる5つの湿原で実施し、訪花昆虫相の湿原間・時期間の比較を行った。結果、両時期とも花の量が多い湿原で訪花頻度が高くなった。これは送粉者が資源獲得の効率を向上させるために花の密度の高い場所を選択するためだと考えられる。また、7月はより高標高の湿原で花が多く、訪花頻度も高かったのは、植物の開花フェノロジーが標高に沿って変化することで花の量が湿原間で異なっていたためである。また、7月にはハナバチが誘引されていたチングルマ・イワイチョウが高標高の湿原において多く開花していたため、湿原間で送粉者の群集組成にばらつきがあった。それに対し、イワイチョウ・チングルマの花期が終わり、全湿原でキンコウカが優占する8月は、ハナバチの出現個体数が下がり、花への選好性が低いジェネラリストである双翅目の優占度がそれぞれの湿原で高くなったことで昆虫相組成の違いが小さくなった。


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