| 要旨トップ | 目次 | | 日本生態学会第67回全国大会 (2020年3月、名古屋) 講演要旨 ESJ67 Abstract |
一般講演(ポスター発表) P1-PB-183 (Poster presentation)
気候変動及び人為的な環境改変による急速な生物多様性の減少が報告されている。生態系機能は生物多様性に影響されることから、生物多様性と生態系機能の関係の解明が行われている。生物多様性による生態系機能への純粋な効果(net biodiversity effect)は、ニッチ差異による資源効率利用や促進効果による相補性効果と、機能の高い種が優占し群集の機能が上昇する選択効果から成り、これら2つの効果に分離できる。net biodiversity effectの既存の研究は、主に植物種数とバイオマスに焦点を当てたものであった。しかし、生態系機能には、複数の栄養段階の生物間相互作用から構成されるものも存在し、その1つである送粉は、植物と送粉者の相互作用から成り、多くの顕花植物の種子生産において重要である。しかし、複数の栄養段階から成る生態系機能の検証は珍しく、種子生産量を伴う送粉生態系機能を対象としたnet biodiversity effectの分離・検証は、いまだ行われていない。
そこで本研究では、植物1種のみで育てた場合と多種で育てた場合、それぞれの虫媒花の種子生産量および送粉ネットワークを比較することで、虫媒花の種多様性が送粉生態系機能に与えるnet biodiversity effectの分離と効果の検証をした。内モンゴル自然草原に設定された植物除去操作プロット(多種系)と1種のみで栽培したプロット(1種系)を調査地とした。種子生産量は種子の乾燥重量を測ることで、送粉ネットワークは送粉観察を行うことでそれぞれ計測した。種子生産量のnet biodiversity effectを分離し、単回帰分析を行ったところ、種多様性の増加に伴い、相補性効果は有意に上昇し、選択効果は有意に減少した。本発表では、送粉ネットワークパラメーターも加味して、送粉生態系機能の生物多様性効果を考察する。