| 要旨トップ | 目次 | | 日本生態学会第67回全国大会 (2020年3月、名古屋) 講演要旨 ESJ67 Abstract |
一般講演(ポスター発表) P1-PB-187 (Poster presentation)
オニヒトデはサンゴの捕食者であり、大量発生を繰り返す事からサンゴ礁保全の観点において注目されている生物種である。近年のミトコンドリア部分遺伝子を用いた研究から、オニヒトデは太平洋種 、北インド洋種、南インド洋種、紅海種の4種に遺伝的に別れることが示されている。しかしながら、種間の明確な違いは報告されていない。そこで本研究では、オニヒトデの太平洋種、北インド洋種、紅海種の比較ゲノム解明から種間の違いの解明を試みた。
本研究において構築されたオニヒトデの太平洋種、北インド洋種、紅海種のゲノムサイズはそれぞれ420 Mb、401 Mb、381 Mbであった。シーケンスリードから推定されるリピート配列長は104 Mb、70 Mb、36 Mbであった。このことからリピート領域が、種間のゲノムサイズ差に影響していると考えられる。次に、オニヒトデ3種の生態学的な違いの解明を試みた。まず、種間共通遺伝子から1種のみに正の自然選択がかかる遺伝子を抽出した後、Gene Ontology enrichment解析を行うことで遺伝子機能の絞り込みを行った。その結果、太平洋種では有意に多く見られる遺伝子機能は確認されなかったが、北インド洋種ではProtein bindingの機能を持つ遺伝子が多く検出された。また、紅海種ではTransmembrane transportの機能を持つ遺伝子が多く存在し、検出された21遺伝子の詳細を確認したところ、17遺伝子12ファミリーのSolute carrier (SLC)遺伝子が存在した。SLC8, 15, 23, 24は棘皮動物の浸透圧調節に関わる物質の輸送を行う他、SLC5, 15, 16, 24, 39は浸透圧、pH、温度などの変化に対応していることが報告されている。このことから、紅海種が紅海の高塩分環境に適応するために、SLC遺伝子が進化した可能性が考えられた。