| 要旨トップ | 目次 | | 日本生態学会第67回全国大会 (2020年3月、名古屋) 講演要旨 ESJ67 Abstract |
一般講演(ポスター発表) P1-PB-188 (Poster presentation)
ゲノム研究が進んでいるサンゴは、複数の種でセルラーゼやキチナーゼといった糖質加水分解酵素遺伝子の存在が示唆されているが、その翻訳産物の機能や性質については、ほとんど報告されていなかった。近年、シジミやアワビなど海洋生物由来の糖質加水分解酵素が複数報告され、その中のいくつかは、高温ストレス耐性や酸性化ストレス耐性、免疫応答などに関わっている可能性が示唆された。サンゴにおいても、シジミ等と同様に、糖質加水分解酵素がストレス耐性に関与している可能性が考えられる。そこで、ストレス耐性の異なる種内系統を確保したコユビミドリイシ(Acropora digitifera)を対象に、RNA-seqによる網羅的遺伝子発現解析が実施されてきた。本研究では、そのRNA-seqデータの中で、特に糖質加水分解酵素遺伝子に着目し、発現が見られた遺伝子群及び系統間で発現量が異なる遺伝子群について網羅的に比較を行った。その結果、コユビミドリイシが複数の糖質加水分解酵素遺伝子を保有していることが明らかになり、その中でもストレス耐性の異なる群体間で、発現量に有意差のある糖質加水分解酵素遺伝子が複数検出された。糖質加水分解酵素は、生物体を構成するために重要な糖質代謝に関わる酵素であり、またプレートアッセイなどで容易に定性的な活性評価を行うことが可能である。そのため、糖質加水分解酵素は、ストレス耐性に優れた個体を簡便に識別することのできるバイオマーカーとしての応用が期待される。