| 要旨トップ | 目次 | | 日本生態学会第67回全国大会 (2020年3月、名古屋) 講演要旨 ESJ67 Abstract |
一般講演(ポスター発表) P1-PB-189 (Poster presentation)
好白蟻性とは,生活史の一部においてシロアリとの共生関係を持つ性質のことである.本研究では,広義マグソコガネ亜科における好白蟻性の進化を明らかにするため,分子系統解析を行った.
広義マグソコガネ亜科は甲虫目コガネムシ上科に属する小型の甲虫であり,落葉,枯死木,花粉,果実,真菌,糞,死肉や腐肉といった多様な食性を持つことが知られている.また,多くの種は自由生活者であるが,一部は好蟻性,好白蟻性を持つことが知られている.よって,広義マグソコガネ亜科は食性や共生生活の進化を研究する上で,適した材料の一つである.しかしながら,分子情報を用いた系統関係の解明は十分に進んでおらず,とりわけ好白蟻性種においては,特殊な生息環境にいるため調査が困難で,分子系統学的研究は行われていなかった.また,先行研究における好白蟻性の進化的背景の解明には肉食者が主に用いられており,腐食者を対象とした研究は遅れていた.
本研究では,国内外での野外調査によって広義マグソコガネ亜科に含まれるすべての亜科・族のDNAサンプルを収集し,核DNA3領域(18S,28SD2,18SD3–D6),ミトコンドリアDNA2領域(16S, COI)の合計4573 bp(アライメント後)を対象に配列決定を行なった.GenBankから取得したデータを含めた合計135 OTUs(内群)および3 OTUs(外群)に対して,最尤法とベイズ法を用いて分子系統樹を推定した.結果として,好白蟻性は好白蟻性種のみからなるCorythoderini-Termitoderini-Termitotrogini系統とRhyparini-Stereomerini系統の少なくとも2回独立に進化したことが明らかとなった.これは,先行研究における形態に基づく系統推定の結果とは異なっていた.好白蟻種における特殊化した形態が誤った評価につながったと考えられる.