| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第67回全国大会 (2020年3月、名古屋) 講演要旨
ESJ67 Abstract


一般講演(ポスター発表) P1-PB-192  (Poster presentation)

農業生産に貢献し得る生態系サービスの検証-収量データに基づいて-
Test of ecosystem service which potentially contribute for yielding

*佐々木穣(首都大学東京), 大澤剛士(首都大学東京), 馬場友希(農研機構•農環研)
*Jo SASAKI(Tokyo metropolitan university), Takeshi OSAWA(Tokyo metropolitan university), Yuki BABA(NIAES,NARO)

生態系サービス(Ecosystem Services)とは、生物多様性を基盤とする生態系がもたらす恵みのことである。農業生態系は、食料を供給するサービスを介し、人間社会に調整サービスの恩恵をもたらしているものの1つである。例として、天敵生物が病害虫の発生を防ぐこと(害虫抑制サービス)、土壌中の微生物や小動物が有機物を分解し、土壌を肥沃にすること、昆虫類による花粉媒介サービス等が挙げられる。生物が直接的に農業生産に影響すると考えられる調整サービスのうち、昆虫類が花粉を媒介する花粉媒介サービスは、既往研究により、そのサービスが直接収量に貢献することが示され、人間への直接的な利益が明確となっている。これに対し天敵生物を活用した事例やその個体数を増やそうと試みた研究においては、天敵生物の増加、あるいは天敵生物と害虫の関係といった間接的な評価のみで、天敵生物と収量の関係という人間への直接的な利益となる部分についての評価が成されていない。
そこで本研究では、クモを対象に、天敵生物による害虫抑制サービスが収量に貢献する可能性を検証する。クモは広食生捕食者で様々な生き物を餌としている。天敵生物としての既往研究も数多くあり、害虫抑制サービスを評価する材料として最適であると考えた。収量は作物を食べる「害虫」により直接的な被害を受けるが、その被害は害虫を捕食する「天敵生物」により間接的に低減される。そして天敵生物の個体数・種数は、圃場周辺の「景観構造」という間接的な要因によって、大きく変動する可能性がある。そこで研究の方法として、圃場におけるクモの機能群の数を調査で把握し、圃場ごとにその機能群の数と収量、さらに機能群の数と圃場周辺の景観構造の関係を検討した。なお、本研究で言う機能とは造網性、徘徊性といった採餌に関係している営巣様式を指す。


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