| 要旨トップ | 目次 | | 日本生態学会第67回全国大会 (2020年3月、名古屋) 講演要旨 ESJ67 Abstract |
一般講演(ポスター発表) P1-PB-194 (Poster presentation)
樹木群集の種多様性は、調査地点に分布する樹種を用いて解析される。樹種ごとの分布には、大きいスケールでは標高傾度に伴う温度変化が影響する。より小さいスケールでは、樹種の分布パターンは微地形によっても説明され、特定の微地形に対して分布の選好性をもつ可能性も示されている。そのため、標高に沿った種多様性パターンには微地形の影響も含まれる可能性がある。本研究では、標高に沿ったα多様度、β多様度、γ多様度のパターンを解析し、それに及ぼす微地形の効果を考察するため、九州大学宮崎演習林内の100地点で樹木種数および標高、斜面傾斜角、曲率(地形の凹凸)を測定した。
20地点以上に出現した13種のうち、8種の出現確率は標高だけでなく微地形にも影響され、特定の微地形に分布しやすい樹種であると考えられた。標高に沿った種多様性パターンを解析するため、100個のプロットを低標高、中標高、高標高の3グループに分割した。α多様度は低標高で最も大きく、標高が高くなるにつれて減少した。βおよびγ多様度は中標高で最も大きくなった。100個のプロットから無作為に50個のプロットを1000回抽出し、種多様性を重回帰分析した。α多様度は標高の平均値が大きいほど減少し、β多様度は標高の標準偏差が大きいほど増加した。これは温度勾配に伴う種の入れ替わりの影響と考えられた。微地形については、傾斜角および曲率の平均値が大きいほどα多様度は増加し、β多様度は減少した。また、1プロットあたりの幹数と出現種数との間には有意に正の相関があった。急斜面や尾根地形では個体サイズが小さく、1個のプロットに入る個体数が多くなることで出現種数も多くなり、α多様度も大きくなったと考えられた。また、β多様度が小さくなった要因としては、急斜面や尾根地形は環境ストレスが大きく、分布できる種が限られ、種の入れ替わりが小さくなることが考えられた。