| 要旨トップ | 目次 | | 日本生態学会第67回全国大会 (2020年3月、名古屋) 講演要旨 ESJ67 Abstract |
一般講演(ポスター発表) P1-PB-197 (Poster presentation)
琵琶湖では水草増加が環境問題となっており、水草の堆肥化による有効利用が対策として行われている。水草堆肥は施用する土壌により植物の生長促進効果が異なることがコマツナを用いた栽培実験で示された。本研究では、水草堆肥の施用による土壌微生物の基質利用性の変化について検証し、水草堆肥の生長促進効果の土壌による違いについて考察した。分析したサンプルは、2014~2015年に行われた栽培実験で採取され、冷凍保存されていたものである。サンプルは、化学肥料による連作を経たビニールハウス内の土壌(ハウス土壌)と一般的な畑の土壌(畑土壌)の2種類それぞれに対し水草堆肥、化学肥料、施用なしの3方式で肥料を施用したのち、コマツナが一定期間栽培された後に採取された。土壌微生物の基質利用性は、BIOLOG Ecoplateを用いて測定した。Ecoplateにより測定された31種類の炭素基質に対する代謝能力から、微生物活性の指標としてAverage-Well-Colar-Development(AWCD)、機能的多様性の指標としてShannonの多様度指数が計算された。また、それぞれの指標に対する肥料の施用方式の影響と、それぞれの指標に対する全炭素濃度、細菌OTU数の関係を一般化線形モデルによって検討した。その結果、ハウス土壌では水草堆肥の施用による有意なAWCD、Shannonの多様度指数の増加がみられた。また、AWCD、Shannonの多様度指数はそれぞれ全炭素濃度、細菌OTU数と有意な正の線形関係がみられた。畑地土壌では、AWCD、Shannonの多様度指数は施用方式による有意な影響は見られず、全炭素濃度、細菌OTU数との有意な関係も見られなかった。これらの結果から、ハウス土壌では、水草堆肥は炭素供給により土壌中の細菌OTU数を増加させることで基質利用性が変化し微生物活性と機能的多様性が増加したと考えられ、畑地土壌では水草堆肥による基質利用性の変化は生じなかったと考えられる。ハウス土壌においては、基質利用性の変化が水草堆肥による植物の生長促進が影響していることが示唆された。