| 要旨トップ | 目次 | | 日本生態学会第67回全国大会 (2020年3月、名古屋) 講演要旨 ESJ67 Abstract |
一般講演(ポスター発表) P1-PC-200 (Poster presentation)
砂浜海岸にはスナガニや海浜性昆虫のカワラハンミョウやヒョウタンゴミムシなど、多様な小動物が生息している。これらの小動物の栄養源は打ち上げ海藻や海洋生物の死骸を直接的あるいは間接的に利用していると考えられるが、同時に陸起源の有機物も利用している可能性がある。すなわち、砂浜汀線付近にいる小動物は海起源の栄養を高い割合で摂取し、汀線から離れるにつれて海起源の有機物依存度は減少し、反して陸起源の有機物依存度が上昇すると考えられる。本研究は、このような海浜動物における有機物依存性の空間変化を仮説とし、安定同位体比(C,N)を用いることで検証することを目的とした。
野外調査は2019年7月に仙台市北釜海岸で行った。試料の採集は、センサスラインに沿った採集とピットフォールトラップを用いて行った。海浜性植物は位置を記録した後に葉を採集し、海藻はドリフトラインに堆積しているものを採集した。魚類は2018年6月から11月にかけて仙台湾で採集された個体を用いた。なお、ピットフォールトラップ採集では誘引物質として釣具の練り餌(商品名:ドーンと鯉)を用いたが、トラップには捕集動物が誘引物質に栄養汚染されないような構造を施した。また、捕集動物同士の共喰いを防ぐため、トラップ内に食塩水を少量入れて溺死させた。
安定同位体分析には昆虫やハマトビムシの場合は消化管内の影響が比較的少ないことが考えられる腹部以外の部位を分析に用いた。また、スナガニは脚部の筋肉部位を用いた。一方、植物サンプルは葉の部分を使用し、魚類サンプルは凍結乾燥後、クロロフォルム:メタノール=2:1液にて脱脂した筋肉部位を用いた。安定同位体データはMixing modelにより解析し、各小動物の栄養段階及び海・陸起源有機物の貢献度を推定した。これら結果について報告するとともに、海浜生物群集を支える海起源有機物の役割について考察する。