| 要旨トップ | 目次 | | 日本生態学会第67回全国大会 (2020年3月、名古屋) 講演要旨 ESJ67 Abstract |
一般講演(ポスター発表) P1-PC-201 (Poster presentation)
林檎果樹園には様々な小型哺乳類が生息しており、猛禽類にとって重要な餌資源である。植物食のハタネズミと食虫類のヒミズとでは、土壌生態系の食物連鎖を通じた生物濃縮係数は異なると予想される。林檎果樹園は殺菌剤として銅、殺鼠剤として亜鉛の散布が行われていることから、重金属を指標として土壌生態系の元素循環を解明するフィールドとして都合がいいと考えられる。
この研究では、林檎果樹園の土壌生態系における食物連鎖を通じた微量元素の生物濃縮を、食性の異なる小型哺乳類間で比較することを目的としている。青森県弘前市内に位置する林檎果樹園(旧林檎果樹園を含む)5地点でそれぞれ表層土壌、植物、小型哺乳類を採取した。捕獲した小型哺乳類はハタネズミ(Microtus montebelli)、ヒミズ(Urotrichus talpoides)、ジネズミ(Crocidura dsinezumi)の三種類である。表層土壌については環境省の定めた条件で塩酸抽出を行い、植物と小型哺乳類についてはマイクロウェーブ硝酸分解を行った。得られた測定試料は青森県産業技術センター弘前地域研究所の誘導結合プラズマ発光分光分析装置(ICPE-9820 SHIMAZU社)を使用し27元素について分析した。この時Yを内標準物質として用いた。
この結果ハタネズミ(n = 35)、ヒミズ(n = 8)、ジネズミ(n = 3)の筋肉中濃度はそれぞれ、銅が4.60±1.47、8.22±1.89、10.5±2.6、マンガンが1.07±0.90、3.72±2.48、2.30±0.79、亜鉛が58.1±13.7、128±77、81.8±20.1となった。小型哺乳類の体重・体長と組織中元素濃度の相関、雌雄差の有無、土壌-植物-小型哺乳類間の相関関係などについて考察し、生物濃縮係数を求める。