| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第67回全国大会 (2020年3月、名古屋) 講演要旨
ESJ67 Abstract


一般講演(ポスター発表) P1-PC-204  (Poster presentation)

日本の森林生態系における土壌窒素純無機化速度に影響を及ぼす要因
Factors affecting net soil nitrogen mineralization rates in Japanese forest ecosystems

*佐々木真優, 向井真那, 北山兼弘(京大・農・森林生態)
*Mayu SASAKI, Mana MUKAI, Kanehiro KITAYAMA(Kyoto Univ. Forest Ecology)

森林生態系において窒素は植物の成長にとって重要な元素である。日本列島には多様な森林が成立しており、土壌中の窒素可給性の指標の1つである窒素純無機化速度は多くの要因が重なり合って決定されていると考えられる。しかし、自然林を網羅的に対象とし、この決定要因を調べた研究は少ない。本研究は全国の自然林から採集した土壌をもとに、土壌窒素純無機化速度を決定する要因を明らかにすることを目的とした。
北海道から鹿児島までの全国13サイトで土壌を採集し、土壌を一定条件下(20℃, 10日間)で培養し窒素純無機化速度を求めたところ、平均無機化速度には有意なサイト間差が認められた。窒素純無機化速度を目的変数、土壌理化学性(pH、 易分解性炭素濃度、 フェノール性物質濃度、全リン濃度、Mg・K・Caの各交換態陽イオン濃度、C/N比)、地上部の森林の針葉樹率及び火山灰加入の有無を独立変数として、PLS-PM解析と線形混合モデルによる解析を行った。
PLS-PM解析においては、窒素純無機化速度に直接関係する要因として土壌フェノール性物質(負の関係)と土壌易分解性炭素濃度(正)が選ばれた。さらに、火山灰は土壌中の交換態陽イオンや全リン濃度を介して、これら2つの有機物濃度に正の影響を与えていた。線形混合モデルにおいても、土壌フェノール性物質(負)と土壌易分解性炭素濃度(正)が有意な要因として選択され、さらに全リンと交換態陽イオン濃度も選択された。針葉樹率はどちらのモデルでも選択されなかった。以上から、これらの森林の窒素純無機化速度には土壌フェノール性物質と易分解性炭素を通した基質特性が効いており、このことが同じ培養条件下で有意な無機化速度のサイト間差を引き起こす1要因になっていた。これらの基質の違いをもたらす要因として、樹種の影響(針葉樹率)よりも火山灰加入の重要性が示された。


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