| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第67回全国大会 (2020年3月、名古屋) 講演要旨
ESJ67 Abstract


一般講演(ポスター発表) P1-PC-207  (Poster presentation)

バイオチャー散布が暖温帯コナラ林の土壌炭素フラックスに及ぼす影響は3年で減衰する 【B】
Effects of biochar amendment on carbon flux decrease  3 years after amendment  in a warm-temperate deciduous forest 【B】

*惠日格也(早大・院・先進理工), 友常満利(早大・教育), 小泉博(早大・教育), 吉竹晋平(早大・教育)
*Kakuya ENICHI(Waseda Univ., Sci. Engi.), Mitsutoshi TOMOTSUNE(Waseda Univ., Edu.), Hiroshi KOIZUMI(Waseda Univ., Edu.), Shinpei YOSHITAKE(Waseda Univ., Edu.)

バイオチャーは生物資源を熱分解して得られる炭化物で、難分解性の化合物を多く含む。この特徴からバイオチャー散布は炭素隔離の有効な手段として注目されている。一方で、土壌表層から大気中へ放出されるCO2 (SR) が増加し、炭素隔離効果が打ち消される可能性が示唆されている。しかしこれらの研究は1年未満の短期的なものであり、SRの構成要素である従属栄養生物呼吸 (HR) と根呼吸 (RR) それぞれに及ぼす影響は考慮されていない。本研究は暖温帯コナラ林において、バイオチャー散布が土壌炭素フラックスに及ぼす長期的影響を解明することを目的とした。 
2015年11月に20 m四方のコドラートを12区画設置し、1ha当たりのバイオチャー散布量に応じてC0、C5、C10区とした。2016年4月からSRを、2017年11月からHRを毎月2019年10月まで測定した。さらにSRとHRの測定結果からRRを推定した。これらの測定と同時に微生物バイオマス、地温、含水率、pHの測定を行った。
SRは4年間を通じてC5, C10区で増加した。HRは、散布後3年目にC5,C10区で増加していたが、4年目に差は見られなくなった。一方でRRについては差が見られなかった。また、年間SR量は3年目までC10区で増加していたが、4年目で差がなくなった。HR量は3年目では散布区で増加傾向を示したが、4年目には明瞭な傾向は見られなかった。1ha、1年間あたりのHR増加量はC5, C10区でそれぞれ0.9, 1.0tCであった。微生物バイオマス、地温、含水率については差が認められなかったが、pHは散布区で増加した。
以上の結果からバイオチャーの散布によってHRが増加し、SRが増加することが明らかになった。また、HRの増加はpH増加による微生物の種組成の変化に起因すると考えられた。一方で、4年目以降これらの影響が減衰したこと、C添加量がHR増加量よりも多いことから暖温帯コナラ林におけるバイオチャー散布は炭素隔離の手段として有効であることが示唆された。


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