| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第67回全国大会 (2020年3月、名古屋) 講演要旨
ESJ67 Abstract


一般講演(ポスター発表) P1-PC-211  (Poster presentation)

冷温帯落葉広葉樹林におけるササ除去管理の土壌窒素動態への影響
Effect of understory Sasa-removal on soil nitrogen dynamics in a cool temprate deciduous forest.

*清本芽生(島根大学), 三尾谷健太(島根大学), 藤巻玲路(島根大学), 川崎雅俊(サントリー), 福島慶太郎(京都大学), 大西雄二(京都大学), 木庭啓介(京都大学)
*Mei KIYOMOTO(Shimane Univ.), Kenta MIONOYA(Shimane Univ.), Reiji FUJIMAKI(Shimane Univ.), Masatoshi KAWASAKI(suntory), Keitatro FUKUSHIMA(Kyoto Univ.), yuji OHNISHI(Kyoto Univ.), Keisuke KOBA(Kyoto Univ.)

森林土壌の窒素循環は撹乱に対して脆弱であり、森林伐採や松枯れなどの植生除去が起こると土壌からの大きな硝酸態窒素流出が起こることが知られている。しかし、下層植生管理などの比較的小規模の植生除去が土壌の窒素流出に及ぼす影響は明かではない。本研究では冷温帯落葉広葉樹林におけるササ除去施業による土壌窒素動態への影響を明らかにすることを目的とし、土壌水硝酸態窒素濃度および土壌硝酸化成速度を調べた。 本研究は鳥取県江府町の落葉広葉樹林にて行った。標高は約900m、土壌は黒色土で、植生はブナ・クロモジが多く、下層にチシマザサが繁茂する。調査区は2017年8月にササを刈り取ったササ刈り区とササ区に設置した。2018年5月から2019年11月まで土壌深30cmと100cmの土壌水を採取し、土壌水の無機態窒素濃度を分析した。一部の土壌水についてδ15NNO3およびδ18ONO3を分析した。また、0-5cmの表層土壌を採取して実験室培養し、土壌の硝酸化成速度を求めた。 30cm深の土壌水NO3濃度は春と秋に増大し、特にササ区の増加が著しかった一方、ササ刈り区の増加は小さかった。当地は冬季に1m近い積雪があり、春の土壌水NO3濃度増加は積雪融解の影響と考えられる。春のササ刈り区の土壌水δ18ONO3はやや大きな値となり、ササ刈り区の表層土壌では脱窒などの硝酸除去が生じたことが考えられる。土壌の硝酸化成速度は春と夏ではやや小さく、秋に大きくなった。また、秋にはササ刈り区に比べササ区の硝酸化成速度が大きくなる傾向にあった。秋の土壌水NO3濃度上昇は土壌の硝酸化成が夏から秋にかけて活発であることによると考えられた。また、ササ刈り後2年程度は土壌微生物の基質特性が変化しており、硝酸化成および硝酸態窒素流出の抑制に働くことが示唆される。


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