| 要旨トップ | 目次 | | 日本生態学会第67回全国大会 (2020年3月、名古屋) 講演要旨 ESJ67 Abstract |
一般講演(ポスター発表) P1-PC-212 (Poster presentation)
土壌呼吸(SR)とは土壌から大気中にCO₂が放出される現象であり、地温依存的に変動するとされている。一方、実際に1日を通じてSRと地温を測定してみると地温の方が数時間遅れて変動することが多い。しかしその遅れが生じる原因については未解明な部分が多い。本研究ではSRとその構成要素である従属栄養生物呼吸(HR)の連続測定の結果を比較することで、SRの日変化のメカニズムとそれが夏季と冬季でどう異なるかを解明することを目的とした。
本研究は冷温帯にある落葉広葉樹林を対象に行った。SR及びHRの測定は2011年7月(夏季)と11月(冬季)にそれぞれ1週間前後行った。SRは自動開閉チャンバーを用いた密閉法で連続測定し、HRはこの方法とトレンチ法を併用して測定した。また、同時に地温と照度の連続測定も行った。
HRは夏季と冬季いずれも主に夕方にピークが見られ、地温と比較するとHRのピークの方が遅い傾向が見られた。これは土壌中で生じたCO₂が地上に到達するまでには時間を要するためと推察される。夏季と冬季で比較すると冬季の方が地温からのHRの遅れは小さくなった。これは冬季の落葉により土壌表層に有機物が供給されるため、表層の有機物分解により生じたCO₂がHRに占める割合が夏季と比較して増加したためと考えられる。
一方、SRは夏季と冬季のいずれも昼と夕方に1回ずつピークが見られた。HRは夕方にしかピークが見られないことから、昼のピークは根呼吸(RR)由来であると考えられる。昼のピークでは夏季と冬季で時間に差は見られなかった。これはRRが照度に影響を受けているためと推察される。ただし冬季は落葉しており光合成が行われていないため、昼のピークの原因についてはさらなる検討を必要とする。