| 要旨トップ | 目次 | | 日本生態学会第67回全国大会 (2020年3月、名古屋) 講演要旨 ESJ67 Abstract |
一般講演(ポスター発表) P1-PC-213 (Poster presentation)
バイオチャーは生物由来の炭化物であり、土壌に施用すると土壌の物理化学性や保肥性の向上によって植物の炭素固定能が増加すると言われている。しかし、炭素固定源として重要な森林においてバイオチャー散布に対する生態系の応答を調べた研究は少ない。森林土壌は上からL層、FH層、鉱質土層という層状構造を示す。本研究では、森林へのバイオチャー散布が、各土壌層位中の炭素・窒素・リンといった諸元素の動態に及ぼす影響を解明することを目的とした。
コナラ種子と野外から採取した森林土壌を用いた室内栽培実験を行った。L層、L層+FH層、L層+FH層+鉱質土層、L層+FH層+鉱質土層+植物から成る4種の栽培容器を用意し、各容器のL層下にバイオチャーをそれぞれ0、5、10、20 t ha-1散布して約80日間培養した。水やりの度に各容器の下方からの流出水を採取し、溶存有機態炭素(DOC)、硝酸態窒素、アンモニア態窒素、可給態リン酸の濃度を測定した。さらに実験前後の土壌に含まれるこれら無機態窒素・リンの濃度を測定し、これらの結果から各土壌層位における窒素無機化速度、硝化速度、リン無機化速度を推定した。
バイオチャー散布区では、L層およびFH層からのDOC流出が増加したが、鉱質土層からの流出に変化はなかったことから、鉱質土層中での吸着や無機化が増加したと考えられた。L層およびFH層からの無機態窒素流出量はいずれも減少した。また、窒素無機化速度、硝化速度はL層で増加、FH層で減少していたことから、バイオチャーによってL層では無機態窒素が増加するものの、下方への移動はしづらくなることがわかった。バイオチャー散布区ではL層およびFH層からの可給態リン酸の流出量は増加しており、これはバイオチャーからの供給によると考えられた。
本研究の結果、バイオチャーが土壌中の諸元素の動態に及ぼす影響は元素によって異なり、バイオチャーに接するL層およびFH層への影響が顕著に出ることがわかった。