| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第67回全国大会 (2020年3月、名古屋) 講演要旨
ESJ67 Abstract


一般講演(ポスター発表) P1-PC-216  (Poster presentation)

野外でのバイオチャー散布がその後3年間のコナラ若木の光合成に与える影響 【B】
Three years responses in photosynthesis of young oaks to biochar amendment in field condition 【B】

*棚澤由実菜(早大・院・先進理工), 友常満利(早大・教育), 鈴木武志(神戸大・農), 小泉博(早大・教育), 吉竹晋平(早大・教育)
*Yumina TANAZAWA(Waseda Univ., Sci. Engi.), Mitsutoshi TOMOTSUNE(Waseda Univ., Edu.), Takeshi SUZUKI(Kobe Univ.), Hiroshi KOIZUMI(Waseda Univ., Edu.), Shinpei YOSHITAKE(Waseda Univ., Edu.)

生物由来の炭化物であるバイオチャーは土壌を物理的・化学的に改良し、草本植物や穀物による炭素固定量を増加させると報告されている。しかし重要な炭素固定源である森林で、バイオチャーが樹木の光合成へ与える影響に着目した研究はほとんどない。そこで本研究では森林でのバイオチャー散布が樹木の光合成に与える長期的な影響を明らかにした。
野外に生育する樹齢約10年のコナラ若木を4本選別し、その周りにそれぞれ半径2 mの円形区を設置後、バイオチャーを0、5、10、20 t ha-1 (C0、C5、C10、C20区) 散布した。光合成の指標として最大光合成速度(Pmax)、光合成生理活性の指標として最大カルボキシル化速度(Vcmax)と電子伝達系潜在速度(Jmax)、葉の特性として気孔コンダクタンス(gs)、面積当たりの葉乾重量(LMA)、葉内元素濃度を測定した。
PmaxはC5、C10区で増加したが、C20区では変化が見られなかった。VcmaxとJmaxもC5、C10区で増加し、それぞれPmaxと正の相関を示した。これらのことからバイオチャー散布によって光合成は増加するが高散布量では変化がないこと、この増加は生理活性の向上によることが示唆された。また葉の特性であるgs、LMA、葉内元素濃度 (特にN、Mg、S) の値もC5、C10区で高く、それぞれPmaxと正の相関が見られたことから、これらの向上が光合成の増加に貢献していたことが示された。さらに、バイオチャー散布によるPmax、Vcmax、Jmaxの増加量は年々小さくなった。これはgsとMg、S濃度でもみられ、バイオチャーによる効果は徐々に減衰すると考えられる。以上より森林でのバイオチャー散布によって樹木の葉の様々な特性が向上し、その結果光合成が増加するが、散布から年月が経過するにつれてその影響は減衰していくことが明らかとなった。


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